人魚の涙〜マーメイド・ティア〜



「蓮には双子のお兄ちゃん、蘭がいるんだけど君は会ったことある?」


「…え?」



親父さんは俺の反応を見て察する


双子の兄貴…?


そんな話は初めて聞く。それに双子なら同じ学校に通っていて目にしてもおかしくないはずだ



「…そうか。やはり…」



それだけ呟くと親父さんはしばらく黙った



「…僕が蓮を引き取りたかったのはね。この子が周りとの付き合い方が下手…というかどういう風に接していいのかわからなくて、よく同い年の子や近所の子たちと揉めててね。だからこの子に合った教育方法で育ててやりたかったんだ。」



まぁ、確かに蓮の周りはいつもピリピリしてて誰も近寄ろうとはしなかった



「でもそれはできなくなってしまったけど。この子の母親はね。ちょっと変わってるんだ。きっと多分見舞いには来ないだろう。でも君が毎日来てくれてるみたいだし、蓮もきっと寂しくはないだろうね。」



親父さんが独り言のように呟くので俺には意味はわからなかったけど、聞いていいのかもわからないので辞めた。


こういうのは俺が勝手に聞いていいもんでもないし。



「じゃあ、僕は手続きしてくるから。蓮のことよろしくね。」



そう言って親父さんは蓮の頭を優しく撫でて病室を出ていった



それ以来、親父さんは多分見舞いに来てはいない



…早く目開けろよ。



そう思っているとピクっと蓮の指が跳ねた



「っ!!蓮!??」


「…ん、だよ。うるせ、な…」



微かな声で反応が帰ってくる



「蓮!!」



もう一度呼びかけてみると今度は薄ら目が開いた



「きこえてるっつーの。」



そしてはっきりと声が返ってきた


俺はそれが嬉しくて泣きたくなった



「泣くんじゃねぇ、泣き虫が。お前、なんも変わってねぇな」


「う、うるせぇよ…、俺先生呼んでくるわ。」



溢れそうになる涙をこらえながら先生を呼びに行った


やっと…、やっと、蓮が起きてくれた。よかった、ほんとによかった。


それから蓮は脳に異常が見られないか軽い検査をし、病状を聞いていた



「マジかよ、俺足骨折してんの。おまけにアバラも?ふざけんじゃねぇーよ、いつ治るんだよ?あ?リハビリ?まじだりぃーわ!」



って医者に切れてたけど、そうなったのはお前自身だからな?


でも、目が覚めた蓮はいつも通り過ぎてなんだか違和感を覚えた


なんかカラ元気というか…前みてた笑顔よりなんか冷たい笑顔な気がする


俺の気のせい…ではないと思う。やっぱり確実に変だと思う



「…なぁ、なんであの日学校来ずに何してた?」



俺は思い切って質問してみた



「…別になんでもねぇよ。」


「なんでもなくはねぇだろ。俺何回も連絡入れただろ?」


「それになんでいちいち返さなきゃいけぇんだよ。」


「心配しただろ!!別に学校来ないなら来ないって返せよ!!」


「…俺がどこでなにしてようがお前には関係ねぇんだよ。」



ガンっ!と頭を何かで殴られたような衝撃の言葉が俺に刺さる



「ハッ、なんだよ。俺たちダチじゃねぇのかよ。」

「…。」



俺の言葉に蓮はただ黙って何も言わなかった


俺はそれが答えだと思い、病室を飛び出した


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