人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
神獣
「じゃあ自己紹介しようか!まだしてなかったよね」
ひょんなことからあたしが2週間、背負い投げしてしまった反省と“万が一”に備えての彼らと過ごすことが決まって立ち話もなんだからと目つきの悪い金髪の隣に座るように言われた。
赤髪のソウタと呼ばれた彼は銀髪の男の子が座っていた2人掛けのソファーに私と向き合う形で座り、銀髪の男の子は金髪の悪魔の後ろにある冷蔵庫からいつの間にかいちごミルクオレを取り出して目つきの悪い金髪の前に座った。
カカオの彼は2人掛けのソファーの後ろにあるパソコンが置いてあるディスクの椅子に座っていた。
「さっきも言ったけど。俺たちは不良と呼ばれる類なんだけど、その中でも集団で行動する暴走族と呼ばれてるんだ。」
不良なのはもちろんの事知ってる。
東棟側の人間ならなおさらだ。
「俺たちは神獣って言って割と昔からあるグループなんだ。ちなみに1人掛けに座ってる金髪の方が12代目だよ。」
「12代目!?そんな昔からあるんですか!?」
さすがに12代目には驚いた。
高校入りたての時麻奈実から聞いた話を思い出す。
『この町には暴走族がいるんだけど、総長って高校に入った時に任命されるらしいよー。治安を守るためだかなんだか言ってたけどそれから卒業まではやり続けるんだって。』
麻奈実は小6からこの町にいるから詳しい。
いろいろ“この街のルール”も聞いたりしたものだ。
「そう、結構歴史あるところなんだ。そんな神獣の情報取集長やってる西条敦《サイジョウアツシ》だよー。ちなみに2年A組だよ、よろしくね千晃ちゃん」
ニコッと交換音がつきそうなほど爽やかなスマイルを浮かべられた。
「じゃあ次は俺が!」
赤髪のソウタと呼ばれた彼から声があがり敦先輩からそっちを見る
「情報補佐やってる、早見奏太《ハヤミソウタ》だ!ちなみに1年B組!2週間だけどよろしくな!」
「よ、よろしく」
ばっと前のめりになるほどの勢いで自己紹介してくれる奏太は多分この中で1番アホだなって失礼だけど思ってしまった。
そんな勢いがよすぎる奏太の襟をガシッと掴んで引き戻す敦先輩
奏太の方が筋肉質なのに、スマートな身体にそんな力があるなんて驚いた。
やっぱり敦先輩を怒らせたらやばいだろうな。
「ほら、ハル。少しの間だけどちゃんと挨拶だけはしなよ。」
敦先輩から催促を受けるのはこの中で1番小柄な男の子だ
「親衛隊長、小川波瑠《オガワハル》。1年B組だっ、女は嫌いだ!」
キッと睨むがあたしには反抗期な高校生にしか見えなくて、返す言葉が浮かばなかった。
「ほら、レンもだよ」
敦先輩は今度はあたしの隣にいる目つきの悪い金髪を促す。
「チッ、神獣副総長、雨宮蓮《アマミヤレン》だ。」
「こら、学年とクラスもだよ」
また敦先輩が滅っとポーズをとる。
やっぱりそれも様になってしまう彼をなんとなくジト目で見てしまう。羨ましい限りだ。
「2年C組だ」
「2年!?」
完全に同い年だと思っていたあたしは叫んでしまった