人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
突然胸ぐらを捕まれて勢いよく蓮の方に引っ張られる。
「てめぇ、どういう意味の驚きだ。」
おぅ、あたしの口は自分自身の命を短くするのに長けていると最近真面目に思う。
「あの、やめて。顔近いし、シャツがしわになっちゃう。」
そういう態度が中学生みたいで年上に見えなかったのだよ。
でもそんなことを言ったら本当に殺されそうだ。
「チッ、今日からお前はパシリだな。」
「え、やだよ。」
こんな横暴な人のパシリになったらきっと酷い命令が飛んできそうだ。
「ごめんね、千晃ちゃん。蓮は気に入った人をパシリにする傾向あって」
「それフォローになってませんよ、先輩。」
ついつい敦先輩にもツッコミをいれてしまった。
だいたい気に入ったらパシリなんておかしいでしょ
人とみなしてないじゃないか!
「…俺は藤原慎《フジワラシン》だ。2年A組」
そんな中、唐突に自己紹介するのは金髪悪魔こと慎だ。
慎はなんとなく先輩そうだと思っていたから驚くこともなかった。
「じゃあ俺たちは終わったから、千晃ちゃんも一応してくれるかな?」
敦先輩があたしに笑いかける。
これ、女の子やられたら落ちるだろうなー。
そんなことを思いつつ自己紹介をする。
「春山千晃です。1年B組です、普通科の。2週間だけどよろしくお願いします。」
そのあとよろしくと返してくれたのは敦先輩と奏太だけで、3人は無視というより慎は目でチラッと見てくれただけでそれが彼なりの挨拶なのだろうと思い受け止めたが、残り2人はガン無視なのであたしは相当嫌われているらしい。
まぁ嫌われていることにそんな頓着ないのでさほどそこまで気にならなかった。