人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
なんというか…。
「暇だ…」
私の一言にピクリとみんなが反応する。
「じゃあ帰れ、ブス」
「うるさい、金髪」
「俺は静かにしてるぞ。」
「あ、ごめん、貴方も金髪だったわ」
自己紹介が終わってからしばらく何もすることがないし帰ることも出来ずに、いや正確に言えば帰り方が分からないのでここにいるだけで。
それぞれやりたいことをやっているのだが
波留は眠いとか言って隣の部屋に寝室があるらしくそこで寝ている。
奏太はマンガを読み漁ってるし、敦先輩はパソコンをずっとイジイジしてて。
蓮はソファーに寝転がってバイクの雑誌を見ていいのがあったら奏多にこれよくね?とか言って。
ちなみに私はどかっと蹴られてお前向こうのソファー行けって言われたから移動した。
慎なんか目を閉じたきり開かない。
そんなに眠ないなら帰ればいいのに。
みんなの観察も飽きてしまった頃ふと出た一言に蓮が反応したもののあたしの返しに慎がパチリと目を開けてトンチンカンな返しが来たのだ。
そんなあたしたちを見てクスクスと笑い、もう一度だけパソコンに向き直って何かを打ち込んでまたこちらに振り返る敦先輩。
「じゃあコンビニでも行こうか、ちょうど飲み物も切れそうだったからね」
椅子から華麗に降りて扉に近づいていく。
「みんななんかほしいものある?」
「バナナオーレ。」
「ぶっ」
おっと。思わず吹き出してしまった。
敦先輩が聞くと真っ先に返してきたのは蓮で、その目つきには似合わないなんともフルーティなチョイスをしてきたので笑ってしまった。
「お前、ほんとに俺様を怒らせたいのか」
こめかみに青筋を立てながらゆるりと起き上がる蓮
「いえ、滅相もございません。」
首をブンブンと横に振っておく。
「あははっ、他はいつも通りでいいよね?千晃ちゃん行こうか」
あたしには今のやり取りで笑う敦先輩のツボがわからない。この人はかなり笑い上戸なのだろう
自己完結して部屋を出た。