人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
倉庫みたいな廃墟を出て数分歩くと道路に出て、目の前にコンビニがあった。
「それにしても暑いね、今日から7月だもんね。」
「そうですよね、年々暑さが増してるような気がします」
そうだねー。と緩い返事を返される。
「早く涼しいところ入ろう」
コンビニ入るといらっしゃいませーとだるそうな店員の声が聞こえる
「千晃ちゃん、好きなもの取ってくるといいよ。俺はみんなの飲み物も取ってくるから」
颯爽と飲料売り場に行く先輩を見送ってぐるっと店内を回る。
「何にしようかなぁ…」
とりあえずチョコ。
これは絶対だ。
キャラメル、んー。迷う。
どっちも買う?いやいや今月まだ始まったばっかりだし無駄遣いはよくないよね。チョコだけにしておこう。
2、3個手に取りまた見て回って歩いているとプリンが目に止まる。
「プリンっ」
1番でかいデカプッチンプリンを手に取る。
もうこれで満足だっ!!
ルンルン気分でレジに向かう。
「はい、ストップ。」
突然後ろから手が伸びてきて持っていたものを奪われた
声の主はだいたいわかっているので驚くことはない
「敦先輩?それ買うんで返してください」
なぜあたしの大好きなお菓子ランキング一位と二位を奪われてしまったのだろうか。
「ついでだから一緒に買うよ」
サラッと微笑んであたしの手から取ったものもカゴに入れてレジに進む。
「いやいや!いいですよ!自分の分は自分で払います」
さすがに会ってばかりの人に奢ってもらうのは誰だって気が引けてしまう。
あたしもそこまで図太くないのだ。
「いいの、女の子に払わせないのが俺のポリシーだからここはそれを立ててくれないかな?」
「な、なんてかっちょいいポリシーだっ!」
「…言い方的には少しバカにされた気分だけどまぁいっか」
ふふっと優しく笑っている先輩の心の素晴らしさにパチパチと拍手を横で送る。
「あたしだったら絶対そんなことできませんよ、毎月のお小遣いでそんなことしてたら生活できないですもん!」
「んー。まぁそうだねー。」
あ。今のはダメだったのかな。
一瞬先輩の顔が曇った。