人魚の涙〜マーメイド・ティア〜


そんな一瞬のことだけどやっぱり敏感に感じ取ってしまう。



「帰ろうか、多分蓮が帰った瞬間遅いって怒ってくると思うから」



さっきの曇った表情はもうなくて思い出し笑いをしている先輩をみて少しだけホッとする。



「どんだけ気が短いんですか、買ってきてもらってるのに」



あたしもつられて笑ってしまう。


そうするとなぜか先輩は固まってしまった。



「先輩?」


「俺、今初めて千晃ちゃんが笑ったの見た気がするかも」


「え、あたし笑ってませんでしたか?」



自分的には笑ってたと思うんだけど



「うん、なんかどれも愛想笑いだったからかな」


「え」



今度はあたしが固まる番だった。



「…ふふっ、本当の笑顔で笑った千晃ちゃんの方が更に可愛いね」


「先輩って実はたらしですよね。」


「やだなー、そんな目で見ないでー」



さっきのポリシーといい今の発言もいい、絶対女の子慣れしてると思った。



「まぁさ、千晃ちゃんが俺たちのこと警戒するのもわかるけど仲良くなれたらいいなって俺はほんとに思ってるから」


「…もちろん、私もですよ」



ほんとに仲良くなれたらきっと楽しいだろうな。


それからは他愛もない話をしながら倉庫に着くと案の定蓮が遅いと文句を垂れてきた。



「せっかく先輩が暑い中買ってきてくれたのに!」


「うるせぇ!」


「もっと感謝しなさいよ!」


「お前は俺のかーちゃんかよ!」


「そうよ!」


「いや、ちげぇだろ!」



なにさ、そっちがノリをふってきたから乗ったのにあっさり却下されてしまった。


おまけにお前なんかが母親とか虫酸が走るとか言われたから軽くスネに蹴りをいれたら悶絶していた。

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