人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
「てか!ほんとに女を連れてきたんだな、シンさん!」
あたしに手を差し伸べながら目線はシンと呼ばれる彼に向ける。
「チアキちゃん、これ頭に当てて。」
カカオの人(カカオブラウンは長いから略して)がいつの間に取ってきたのか氷を差し出す。
確かにこの痛みは腫れそうだ。
有難く頂戴することにした。
「こら、ソウタ!ちゃんとチアキちゃんに謝れ」
カカオの人があたしにドアを思いっきりぶつけた赤髪の人に滅っ!と今時の男子高校生がやったら頭を抱えたくなるようなものだがそれさえも様になっている。
「うっ、悪かったよ。ごめんな、痛いよな。傷は出来てるか?もし残ったら…責任取らなきゃダメなのか!」
「え、なんでそうなった?」
思わず突っ込んでしまったことは許してもらいたい。
「で、どうするんだ。」
またそれか。シンとやらもかなりしつこいようで。
「だーかーらー!あれはほんとにすいませんでしたって言ってるじゃないですか。たまたま癖で」
「クセで人を背負い投げするか?ふつー。」
レンという奴がケッとバカにしたように見下してくる。
背負い投げ
ほんとにあの時の自分を殴ってやりたい。
どうして突発的なところはいつまでたっても治らないのだろうか。
「おまけに貧血で倒れるとかー。ありえない」
銀髪の彼も白けた目をあたしに向ける。
それは断じてあたしのせいではない。
このシンという男が怖かったから逃げたのだ。
だってあんなどす黒いオーラ出されたらチビるか、逃げるかしか生き抜く道は残ってない。
「はぁ…。」
今日何度目かのため息を吐いた。
ー…なんでこんなことになったのやら。