人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
ブーブーブー
「んっ…」
ブーブーブー
うるさいなぁ、気持ちよく寝させてよ
いつまで経っても鳴り止まない携帯のバイブにあたしが折れて手探りで手に取る。
「ふぁい、もひもひ」
寝起きで滑舌がうまく回らないのは許してほしい。
『あ、千晃ちゃん?おはよう、家の前に車止まってるんだけどいつ頃準備できそう?』
…誰?
聞き覚えがあるような無いような声にあたしは寝起きの頭を働かせた。
『もしもーし?千晃ちゃん?聞こえてるー?あと5分くらいでHR始まる時間だよ』
聞こえてるよ。
…はぁ!?あと5分でHRって言った!?
慌てて耳からスマホを話し画面を見ると時刻は8時25分。
通話相手の名前も表示されていたので見ると
「敦、先輩?」
『そうだよ、ちなみに外でかれこれ30分くらい待ってるんだけど』
あたしのスマホにいつの間にか登録されている敦先輩の電話番号。
薄々だけどあたしは変な人たちに目をつけられたことを思い出させる。
てか、あたしすごい待たせちゃってる!!
「即、準備します!5分で終わらせます!」
『ゆっくりでいいからね、待ってる。』
電話越しでクスクス笑っている敦先輩は本当に心が広い方だ。
「お待たせしましたっ!!」
「ほんとに5分以内だ、すごい」
電話を切ってからこれでもかってくらいの速さで準備を済ませたあたしは走って昨日乗った車が停まっていた場所まで行くと後頭部席が空いて、先に乗っていた敦先輩に乗ってと促された。
「ハァ、すいません、だいぶ待たせてしまってて」
こんな少しのことで息切れしてるなんてあたしも歳をとったな。
まだ15歳だけどね…。
「いいよ、待つのは慣れてるから。」
どういうことだろう?
「俺以外の神獣のみんなは朝起きれないんだよ、迎えに行っても2時間くらいは出てこないのが当たり前だよ」
「敦先輩も苦労人ですね。」
あははっと笑っている先輩にあたしはせめてもの労いの言葉をかける。
「まぁ昔からだからいいんだけどね」
…なんだか神獣のみんなが羨ましいな。
いつから知り合って、いつから友達なんだろう。
仲間なんだろう。
まぁ。こんなこと考えても仕方ないことなんだけどね