人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
「なんでこうなったのか、私には説明しなさいよ」
眉を下げてまた心配そうな顔をする。
これ以上心配させるわけにはいかないので昨日のことをザッと説明した。
背負投げしたこと、鬼ごっこして倒れたとこを助けてもらったこと、二週間の約束の話、一通り説明し終わると盛大なため息をつかれた。
「ほんっとにあんたってやつは!何考えてるのよ」
「し、仕方ないよ、いきなり肩掴まれたんだもん。びっくりするでしょうよ!」
「そのすぐ手が出るのやめなさいよ、昔からそうだったけど」
あまりにも呆れてる麻奈実にてへっとしても
「キモいわ、やめて」
とバッサリ切られた。
麻奈実だって昔は弱気で運動が苦手で可愛い女の子だったのに、今のこの口の悪さといったら。
「お姉ちゃんは悲しいよぉぉ」
「千晃が姉なんてごめんだわ」
またしてもバッサリ切られた。
「ねぇ、別に千晃がほんとにあいつらと期限が過ぎても関わりたい、仲良くなりたいって思うなら私は止めないし、止める権利もないけど」
麻奈実はそこで一旦言葉を切って下に附いていた顔をあげてあたしに向けて訴えかける。
「残される側も傷つくし、なにより千晃が最後に苦しむような結果になるなら今のうちに線を引いといたほうがいいと思う。」
あたしは麻奈実の言葉に苦笑いするしかできなかった。
なんとも言えない沈黙が麻奈実とあたしの間に流れていく。
どちらかが喋らなきゃこの沈黙は続くんだろう。
それはきっとあたしが話さなきゃいけないんだろうけど何も返す言葉が出ない
しかしそれを破ったのはあたしたちではなく鼓膜が破れるほどの悲鳴によってだった。
「きゃぁぁぁぁー!!」
な、何事?
「…もしかして」
それだけ呟いて麻奈実は駈け出す
「ちょ、麻奈実!?」
あたしもそれにつられて駈け出す。
麻奈実は体育館裏から表に周りそのままグランドの方に突っ切る
グラウンド側に行けば行くほど悲鳴が大きくなる
グランドに出る手前で麻奈実は止まる
「やっぱり、あいつらだ。」
麻奈実が見てる方向をあたしも見るとそこには
正門から通ってくる人影。
「…神獣?」
そこから校舎に向かって歩いてきてるのは神獣のメンツだった。
彼らがこれほど人気だとは知らなかった。
確かに美形だし、モテるのはわかる。
でもあたしが入学して以来、こんな破れるほどの悲鳴を聞いたのは初めてだ。
こんなに人気ならもっと早くに気づくのに。
不思議に思って麻奈実に聞く
「あぁ、あいつらはこうやって騒がれるのが嫌でいつも裏から入ってくるのよ。裏門は校舎からは見えないからね。」
なのに今日に限ってなんでわざわざ表から?
いつものように裏から来ればいいのにとあたしと同じ疑問を抱く麻奈実
「とりあえず教室に戻ろう」
そう言って麻奈実はあたしの手を引いたのだった。