人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
ー遡ること数時間前ー
それはほんとに、ほんっとーに些細なことだった。
「春山ー。これ職員室に運んでくれないか?お前今日日直だろう」
そう、たったこの一言だった。
「えー。まっちゃん自分で運びなよー。」
まっちゃんこと担任の高松にあたしはぶーぶー文句をたれる。
「あっちまで運ぶのはしんどいだろ?」
「え?それあたしの目の前で言っちゃう?」
運べと命じられて仕方なく運ぶことにする。
「チアキー?それまさか運ぶの?」
よっこらせ、と持ち上げるのはクラス全員の生物のノート。
「ん。まっちゃんが押し付けてきやがった!」
全くー、と笑って振り返る。
そこには私の親友、高坂麻奈実《コウサカマナミ》が立っていた。
「でも、あんた昨日アレだったでしょ?」
さらに心配そうに顔を歪める麻奈実。
そんな麻奈実を全くほんとに心配性だなーと笑う。
「大丈夫だって、あたしが体力人並みよりあるって知ってるでしょ!」
にっこり笑顔で言うとほんの少し眉をひそめ食いさがる
「半分でも持つよ、あっちに1人で行かせるのは心配すぎるわ。」
まぁ確かにそうだよね。
でもそれはこっちも一緒で
「麻奈実を連れて行くわけにはいかないよ、なんかあった時にそれこそアレのせいで麻奈実を守りきれないかもしれないし、そんなことになったら私がスバルに怒られちゃう」
ほんとに大丈夫だとアピールするためにおどけてみせる
「…なんかあったらすぐ連絡するのよ!」
はいはーいと返事をしながら私が向かうのは職員室がある方。東棟に向かう。