人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
あたしが今あったことを説明し終わると慎と奏太の敵意も消えていった
だけど問題はあたしの横に座っている蓮が敵意をビシバシ飛ばして来る
昨日来た時も割と敵意は感じたけど今日はそれ以上感じる
「気にするな、波瑠が悪い」
蓮に気を取られていると慎に声をかけられてそっちをみると苦笑いのような表情を浮かべていた
でもあたし的にこれはどっちが悪いとかじゃなくて姉弟喧嘩みたいな内容に言い合いの中であたしが強く言いすぎたことで波瑠を傷つけてしまったのだ
そりゃそうだよね、昨日あったばっかりの見ず知らずの女が自分のテリトリー荒らされておまけに自分のプリンまで食べようとして…あたしのなんだけどね
その上キツく言い返されたらあたしだったらこんな奴とは友達にならない
…波瑠に謝らなきゃ
あたしは波瑠のこと嫌いじゃない
そんなに喋ったことないけど雰囲気的に
…仲良くしたい
そう思ったら即行動してしまうのがあたしなのだ
「あたし、波瑠に謝って来る!」
立ち上がるなり扉を開けて走り出していた
みんなが慌てて止める声を無視して
とりあえず謝りたくて倉庫を飛び出したのはいいもののどこに行けばいいのかさっぱり見当もつかない
みんなに波瑠が行きそうな場所聞いておけばよかった…
今さら思い返しても仕方がない
街におりてみてその辺のゲーセンとか調べてみたらいるかもしれない…とりあえず行ってみるか!
あたしは昨日行ったコンビニがある大きな道路まで繋がる一本道を歩き出す
波瑠、今度はあたしの話ちゃんと聞いてくれるかな?
さっきみたいに取り付く島もない感じだったら、聞いてくれるのは難しいそうだ
どうしたもんかな…あたしが敵意ないことを理解してもらわないと話は進まなさそうだな。
そんなことを悶々と考えていると一本道を誰かがあたしとは反対側から歩んでくる人影が見える
7月なので6時を回っても夕日がまだ見える
その逆光で誰なのかはわからない
でも向こうからすればあたしのことは見えているのでピタッと止まった
もしかして
「波瑠?」
なんとなくそんな気がした