人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
タイムリミット
「ふぅ、うぐっ、うぅ」
ズビズビと鼻をすする
「うっわー、ありえねぇ」
「ふふっ、やっぱり千晃ちゃんは優しいね」
「…ほら」
蓮はあたしをドン引きした目で見て、敦先輩は優しく微笑んで、慎はティッシュを差し出す
「あ、ありがどぅぅ」
慎が差し出してくれたティッシュをもらい鼻を噛む
「や、やっぱり泣けるよなぁ!このシーンは何度見ても泣けるよなぁ!」
隣に座っている奏太もティッシュをもらっている
「ケッ、ただ犬が寿命で死んだだけだろうが、奏太も何泣いてんだ」
ドカっと奏太を蹴る蓮は自分の目元が少し潤んでいることに気がつかないのだろうか
「そ、そういう蓮も泣いてんじゃねぇかよ!」
「あんだと!?」
蓮と奏太の喧嘩が隣で始まる
せっかくいい話で終わったのにこいつらと来たらほんとに懲りない
「お前ももう泣くな」
そう言って慎は自分の方にあたしの顔を向かせてティッシュで涙と鼻水をふいてくれる
1つだけ言うならば鼻水拭いた面で涙を拭かないでくれ、せめて面を変えて拭いてくれ
2週間という約束もあと3日となった今日は日曜日。
学校もなく休みなので昨日奏太が借りて来たというDVDをみんなで見ることになったのだが、どれも泣ける話の動物物語ばっかりでとりあえず初めに見た映画をたった今、観終わった
土日もここにいる様に言われて毎回暇だというあたしのためなのか分からないが、いつの間にかこの部屋にテレビがあっていつもはテレビゲームをして勝負が白熱しているテレビからエンドロールが流れている
「お前は笑った方がいい」
慎はさりげなくほかの女の子が聞いたら卒倒しちゃいそうな甘い言葉を言える、でも相変わらず鼻水を顔に伸ばしてくれているが。
ー…ガチャ
「…もうなに。うるさいんだけど」
寝室がある方から出て来たのは波瑠だった。
あの日、波瑠と揉めた日から少しだけみんなの態度が変わった。