人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
あの日、波瑠と手を繋いだまま倉庫に戻ると
いつも下にいるガラの悪いお兄さんたちが顎が外れんばかりに口を開いてこっちを見ていたがお構いなしに部屋に入ると
「は!?んえ?どういうことだ、てめぇ!!」
蓮が真っ先に歩み寄って来てバリッと勢いよく引っ張られスポッと蓮の中に収まる
そのせいで自然と波瑠と繋がれていた手が離れた
だけどさすがにこの体勢は恥ずかしい…
ま、まるで蓮に抱きしめらてるみたいではないか!!
「ちょっといきなり何すんのよ、バカ!」
ー…ドス!
蓮の胸板辺りにあたしの頭突きがクリティカルヒットする
それに叫びにならない悶絶をしてあたしから離れてソファーに崩れ落ちた姿を見て清々しく鼻で笑っておく
「まぁまぁ蓮、気持ちはわかるけど落ち着いて?それから慎もね」
クスクス笑いながら敦先輩は場を納めていくがなぜが慎まで指摘する
首を傾げて慎を見ればなぜか不機嫌そう
え、何故ゆえそんなに眉間にシワがよってらっしゃるの?
慎をまじまじ見ていると声が掛かる
「仲直り、したいみたいだね?」
敦先輩はニコリと嬉しそうに笑う
「波瑠、てめぇ女嫌いじゃねぇのかよ!」
蓮はようやく痛みが治まったのか、お腹を摩りながら吠える
蓮の問いかけに波瑠は笑って、あたしに歩み寄って手を取る
「大丈夫みたい…千晃は千晃、だもんね」
キュンキュン!!!
あたしのハートは今打ち抜かれた!
初めて波瑠があたしに笑顔を向けくれた
青い瞳がやっとあたしを見てくれた
あぁ、可愛い
たまらず波瑠の頭をくしゃくしゃと撫でる
そうするとまた嬉しそうに波瑠が笑ってくれた
「はっ、なんなんだよ、まったく」
蓮は呆れたように言い捨てるがどこか表情は柔らかい
「すげぇじゃん千晃!あの波瑠を手懐けるとは」
奏太が感心してパチパチと拍手を送ってくる
波瑠はペット扱いかい
「奏太うるさい!犬みたいに言うな!」
波瑠も私と同じことを思っていたのか、奏太に蹴りをいれる
「いってぇ!だって事実じゃん!」
そうして波瑠と奏太の蹴りと拳の応酬が始まる
やれやれと思い蓮が座っている隣に腰を下ろして
ふと慎の方を見れば優しく微笑んでいた
まるで声にならない、“ありがとう”を言われてるみたい…
だからなんとなく私も“どういたしまして”という笑みを返すとまたふっと微笑んでくれた