人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
そんなもうすでに懐かしいような感じで思い出していると、波瑠の青い瞳があたしを捉える
「あー!!千晃が泣いてる!誰に泣かされたの?許せない、ぶん殴ってやる!!」
ずんずんとこっちに歩いて来て隣に座っていた奏太を無理やり押し倒すとその反動で蓮も押し倒される
「大丈夫?俺になんでも話して?」
波瑠はそう言うとあたしをぎゅっと抱きしめる
あの日以来まるで存在を確かめるかのように1日一回はこうして抱きついてくるようになったけど、嫌な気がしない。
だって、だって!
可愛いんだもの!!!
銀髪のふわふわした髪に青い瞳がまるで天使のよう
「ありがとう波瑠。でも違うの、このび「だーーー!いてぇな、波瑠この野郎!ヤんのか!」
あたしは弁解しようと話したがバカに遮られ、波瑠は蹴飛ばされてあたし側に倒れこんで来ると思ったから身構えたのに
「慎、恥ずかしいから離して」
なぜかくるはずの衝撃は来ず、胡座をかいて座っていた慎の上に座らされていた
ふわっと体が浮いたと思ったらこんな状態だ
恥ずかしいったらありゃしない
てかむしろよく蓮の蹴りで巻き込まれることを想像できたなって感心してしまう
「もしかして千晃泣かせたの蓮!?てか絶対そう!蓮しかありえない!ぶっ殺す!」
そのビジュアルにそぐわないどす黒いオーラと言葉で蓮だと決めつける
待って、違う
止めに入ろうと動こうとするけど慎が後ろからキツく押さえ付けてくるので動けない
「ちょ、慎!離して」
体を捻ろうとしても敵わない
「ダメだ。危ない」
頑なに慎があたしの事を離さないのでそうこうしている間にバトルが勃発してしまった
「はっ、誰があんなブス鳴かせるかよ!まず勃つもんも勃たねぇわ!」
「ちょっと待て、いろいろ意味違うから!」
思わず口に出してツッコミをいれてしまった
「最低だな!千晃をそんな目で見るなー!」
顔を真っ赤にして波瑠があたしの代わりに蓮を殴った
よし、波瑠よ。よく殴ってくれた、感謝。
誰も止めないので、というか止めようとしてるのに慎が離してくれないから向こうがどんどんヒートアップしていく
「どりゃぁぁ!」
「せいっ!!」
おまけに変な掛け声まで出してるし
ー…バキッ!
「うぁあああ!DVDがぁぁぁあ!弁償しろー!」
波瑠が蓮にタックルした弾みで倒れ込んだところに奏太が借りてきたDVDがあった
まぁ、それも見事に真っ二つだ。
奏太も混じって一層うるさくなる
そろそろほんとに止めないと物が壊れていく
「ちょっと、あんたらいいかげ「うるさいんだけど」
あたしの制止の声を遮りピシャリとこの空気を凍らせたのは、敦先輩だった
さすが、恐ろしすぎる。
後ろに死神が見える、絶対怒らせちゃいけない人だ…
そのオーラに圧倒されて騒いでいた3人も黙った
「慎も、いい加減にしなさい」
敦先輩はなぜか慎にも注意をする
「チッ」
慎さんよ、この雰囲気で舌打ちできるあんたが凄いわ
隣のアホトリオもたらたら冷や汗をかいている
それだけ敦先輩は怒らせたら怖いのだと改めて思わされた