人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
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バタン
入ってきた人をみれば慎だった
「あ、おかえりー、ご苦労様」
そう言って俺はコーヒーを手渡す
「あぁ。敦、あれやってくれ」
他のメンバーにも入れようと思っていた手が思わず止まる
「まじかよ、慎!あいつ了承したのか!?」
「してねぇ」
「じゃあ余計にダメだろ!巻き込むじゃねぇよ!」
「でも俺もやってほしいかも…だって千晃にはずっとここにいてほしい」
「てめぇもなにいってんだよ!あいつが傷ついてもいいのかよ!」
「それは嫌だ!だから俺が守る!」
「はぁ?何言ってんだ、俺より弱いだろーが」
「なんだよ!!やんのか!」
もう、ほんとすぐ波瑠と蓮は喧嘩するんだから。
「はいはい、そこまで。」
俺は立ち上がって掴みあっていた蓮と波瑠を引き離す
そしてさっきからなにも喋らない奏太を見る
正直俺は奏太が一番心配。
「あっくん、明日俺があの女迎えに行ってもいい?」
ほら、やっぱり。そう来ると思った
さて、どうしようかな
「千晃ちゃんに手荒な真似はしないって約束できる?」
奏太は少しみんなより危ないところがある
一歩踏み外したら…そんな危険性
「…まぁそうだな。あいつがヤバいやつじゃなかったらな」
ニヤッと笑う奏太は妖艶だ
「…これは千晃ちゃんの無事を祈るしかないかな」
俺は苦笑いで答える
「くっそ!どうなっても知らないからな!」
「蓮はどうしてそんなに千晃を嫌うのさ!」
波瑠の言葉に何も返せず蓮の視線が右往左往する
そんな姿を見て俺は思わず笑ってしまう
「ふはっ、違うよ波瑠。蓮はただうまくできない不器用さんなだけだよ」
蓮を見ていた波瑠が俺を見る
「どういう意味だ?あっくん」
それ以上俺は答えなかった、蓮が怒るといけないしね。
さてさて、とりあえずやりますか。
千晃ちゃん…もう逃げられないね。
こんな獣たちに好かれちゃあね、逃げ切れないよ
せめて俺だけは良き理解者であるように努力するよ
「…絶対逃がさねぇ」
ほら、獣がお腹を空かせてる…
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