人魚の涙〜マーメイド・ティア〜



いつの間にか放課後になり帰る支度をする



「千晃」



呼ばれて顔を上げるとそこには麻奈実がいた



「なぁに?」



麻奈実は少し言いにくそうにする
こんな麻奈実は珍しい、割とはっきり最近はものを言うようになったから。



「千晃、この前言ったこと覚えてる?」



前に言ったこと…記憶をたぐりよせる



「体育館裏のこと?」



残される人の気持ちを考えろと言われたあの時のことだろうか


麻奈実は頷き口を開く



「あれ、聞かなかったことにして。」


「え、どういうこと?」



確かにあれは事実だ。
だから聞かなかったことにはできない



「余計なこと言った。あんたが好きなようにするのがいい。あいつらならきっとあんたのどんなことでも受け止めてくれると思う。そういう覚悟で千晃に言葉をかけたんだと思う。だから聞かなかったことにして」



それだけ言って麻奈実は颯爽と帰っていった


あたしはいつもの車で倉庫に向かった



「ちーあーきー!!」



その声が聞こえて思わず身構える


そして案の定ドシッとお腹あたりに重みがくる



「待ってたぞ!一緒にゲームしようぜ!」



倉庫に着いて部屋に入るや否や波瑠が飛ぶようにあたしに抱きつきズルズルとテレビの前まで連れて行く



「よぉ、千晃!遅かったな!」


「奏太…」



奏太に対しても違う意味で身構えてしまう


それに気づいたのかニヤッとする
…なんだか気にくわない奴だ。



どかっと奏太の隣に座ってやる



「奏太、あたしと勝負しよ!」


「へぇ、いい度胸じゃん」



あたしは奏太がどんな奴だろうと、もうどうでもよかった


奏太の人間性は考えるだけ無駄な気がした。
でもちゃんと警告は受け取っとく


あたしのため。らしいから


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