人魚の涙〜マーメイド・ティア〜



連れてこられたのは西棟の屋上


フェンスに向かって思いっきり投げられる
おかげでド派手に転んだ



「ぶへっ」



いきなりのことだったから受け身が取れず変な声が出たじゃないか
投げるなら投げるって言ってよ、もう


いててて…あれ?


フェンスにしがみ付きながら起き上がると視界に鮮やかな金髪が映る


あの人なにしてんの?
なんで肛門に、いや間違えた。


なんで校門に向かって歩いてるの?
まだ授業あるだろうに



「ちょっと聞いてんのかって言ってんの!」


「イタッ」



あまりの痛さに生理的な涙が出る


無理やり髪の毛を後ろから引っ張られてて痛いったらありゃしない



「いい!?神獣はみんなのものなの!あんたみたいな女が近づいていい人たちじゃないの!」



なにそれ。あほらしい。


遠ざかって行く鮮やかな金髪を見ながらそんな話を聞いてるとそんなことを思った



「ちょっと!聴いてるの!?何見て…ハッこの女!ふざけてんじゃないわよ!」



今度は思いっきり押されてフェンスと盛大にぶつかり合う


地味に痛いんだけど。
アザとかにならなきゃいいな



「この女今、慎さんのこと見てた!」




…は?




「まじ!?信じらんない!こんだけ言われてるのにまだわかんないの!?」


お姉さんAにお姉さんCが反応する


「ほんとだ、慎さんよ!美しい…」


うっとりし出すお姉さんがたにあたしは大きなため息が自然と出た。


この人たちほんとにあいつらのことが好きなんだろうか?



「なによ!その態度は自分のものだって言いたいわけ!?」



また掴みかかって来ようとする手をパシッと払いのける
そしてずっと言いたかったことを言ってやる






「なに言ってるんですか?あれは慎じゃなくて、蓮ですよ。」







そう、あの後ろ姿は紛れもなく蓮だ。






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