人魚の涙〜マーメイド・ティア〜



奏太からなかなかスマホを奪えないでいると横からスルッと蓮が奪って写真を消去した



「あのな、もういいだろ!こんな奴のパンチラ写真なんかお前の携帯が腐るぞ!」


「ちょっと聞き捨てならんわね!」


「何その日本語、超変なんですど~」



蓮の言葉にあたしが突っ込み、あたしな言葉に奏太が腹を抱えて笑いながら突っ込んだ



ーガチャ



「千晃!」


「グハッ」



聞き覚えのある声からいきなりドスッという重みが腹部にかかったせいで変な声出た


それをまた笑ってる奏太を睨みつける



「千晃!どこも怪我してない!?」



そんな飛びついて来た人を見ると



「波瑠、どうしてここに?」



フワフワの銀髪を撫でる
そうすると嬉しそうに目を細める



「千晃の危険はどこにいても分かるよ」



…不覚にもお姉さんキュンとしちゃったよ。


ブンブンと頭を振る。いかんいかん。波瑠トラップに引っ掛かるとこだった



あたりを見渡すといつの間にかみんな揃っていた



「千晃ちゃん、安心したよ。なんかあったらすぐ連絡ちょうだいって言ってあるでしょ?」



敦先輩が眉を下げて安心したような困った顔で笑っている



「え、特になんもなかったですけど?」


「んー、千晃ちゃん。慎を見てみて?」



慎?



「…すごい怒ってらっしゃる?」



見なかったことにしようかなって思ったけどあまりにも怖い顔してるから目を逸らせなかった



「…なんで俺たちをすぐ呼ばねぇんだ」



俺たちを呼ぶ?



「そんな怒んなよ、慎。ちゃんとこいつは俺様を呼びやがったぞ」



蓮があたしの頭に腕を置く



「ちょ、重い」



退けようと身動ぐ



「あ、チビブスの頭か。丁度いいとこにあるから腕置き場かと思ったぜ」



ほんとムカつくな!



「うっさいわね!あんた「千晃」



蓮に言い返そうとしたら珍しく慎に遮られた


なぜかシーンとした空気になり、慎に視線が集まっているのがわかる。



「もういい。今ここで答えを聞く。」



…答え



「…俺たちと一緒に来るか?」



あたしは、これから先どんな罰も罪もすべて背負う。



だから、今だけは



「…行く。それがあたしの答え。」



あたしの答えに慎は



「あぁ。」



短く返事を返して微笑んでくれた。
すごく綺麗な笑顔だった。


それだけであたしと彼らの何かが繋がった気がした。



「じゃあ話まとまったから行こうか!」



敦先輩が爽やかに微笑む。



「行くってどこにですか?」



あたしの質問に隣に立っている蓮がため息をついた



「しゃーねぇから守ってやんよ、チビブス。俺らのそばから離れんじゃねぇーぞ。」



待って、答えになってないんだけど。
行先聞いてんのに、何きもいこと言ってるんだ。



「あれっ、千晃!顔赤くしてどーした?」



ニヤニヤしながら人の顔をじろじろ見てくる奏太を押しのける



「う、うるさい。」



屋上から出ていくみんなに続いてあたしも急いでついていく



…別にあたしは蓮の言ったことにドキッとしたんじゃない。



昔好きだった人に、言われた言葉だったから



ただ、それだけよ。


そう自分に言い聞かせてこのドキドキを静まらせた


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