人魚の涙〜マーメイド・ティア〜



「信じらんない!なんでよ!?」



バンバンと机を叩いて目の前にいる麻奈実に訴える



「まぁその方が安全だからいいじゃない、こんなとこいたらまた女の餌食になるわよ?」



にっこり笑って恐ろしいことを言う



「寂しくないのか!麻奈実さんや!」


「別に。会えなくなるわけじゃないから」



…かっけぇよ


どうしてあたしはこんなに怒っているのかというと昨日屋上を出てからのこと。


あたしたちが向かった先は理事長室



「行くってまさかここ?」



あたしの質問に敦先輩は困ったように笑い説明してくれる



「千晃ちゃんには申し訳ないけど二学期から東棟に通ってもらうんだけどいいかな?」



え?あたしの聞き間違えですか?



「もう一回言ってもらえます?今なんて?」


「ハッ、バカだな日本語も分かんねぇーのか」



そういう蓮を肘で思いっきり殴っておいた。
変なうめき声聞こえたけど、無視だ。



「…千晃、決定事項だ。諦めろ」



慎に言われるともう仕方ないことなのかとなぜか諦めがついてしまいそうになるが



「待って、あたし不良じゃないよ」


「千晃ー、俺たちと…一緒にいて?」



お姉さんを困らせるんじゃないよ、波瑠くんよ。


可愛い顔してもお姉さんは決してわかったなんて…



「わかった」



言ってしまった。


何をあたしは、わかったなんて言っているんだろうか


波瑠はあたしを載せるのが最近上手くなってきている気がする…。



「で、でもそんな簡単に理事長許してくれるわけないよね?あたし問題行動とか何もしてないし」


「千晃~、お前自分の通ってる学校の理事長の名前くらい覚えときなさい~」



あたしの疑問に呆れながら奏太が肩にポンと手を乗せてくる



「は?理事長の名前くらい言えるから!確か、西条聡りじ…」



…西条?


あたしはハッとして敦先輩を見る


確かこの人も西条だったはず。まさか。



「千晃ちゃんが考えてることで正解だよ、俺息子なんだ」



ニコッと微笑んでくる敦先輩は少し業務的に見えた



「そう、だったんですね」



あれ?でもなんでそんなご子息が東棟なんだろう?
西棟の方がクリアなのに


でも今聞く質問ではないような気がして聞かなかった


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