人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
「きっと蛇のとこで手こずってるんじゃないかな?」
蛇?え、それ大丈夫なの?
「あっくんなんで行かなかったの?」
波瑠はこてんと可愛らしく頭をかしげる
「珍しく奏太が行くって言ってきたんだ。きっと何か気になることがあったんじゃないかな?」
ふーんと聞いといて興味なさげな返事を返す波瑠
どうやらこの話はここで終了らしい。
あたしには何を話してるか全くわからないけど聞こうとも思わない。
一緒にいるとは言ったけど“仲間”ではないから神獣のことに関しては深く関わることができない気がしたから。
きっとあたしは…
あれ?どんな存在なんだろう。
友達?んー、まぁそういう類だよねきっと。
そんなあたしの思考を遮るかのように入り口が開いた
「ああー!クソ疲れた!」
なぜか少し乱れ気味の蓮を先頭に奏太、慎と入ってくるが3人とも乱れている、服装とか髪が
「お疲れ様、どうだった?」
敦先輩が声をかけてそれぞれに飲み物を渡す
「どうもこうもねぇよ!あの蛇女たちなんで自分たちじゃねんだとか言いよってきやがってうんざりだぜ!」
ダンっと蓮が一気飲みしていた相変わらずなバナナオーレを強く机に置く
「そういうとこがうんざりなんだわぁって感じ~」
奏太が蓮に同調するように手をヒラヒラとさせて迷惑そうな顔をする
どうやらお疲れ気味のようだ。
「そう、でも説得できたんでしょ?その顔だと」
敦先輩は慎の方を見て尋ねる。
あんな仏頂面ばかりしている慎の顔色は少し疲れて見えるだけでそれ以外はなにも変わらないのに、どうしてわかるのか。
きっと長い付き合いだからだろうか。
…みんなはいつから知り合ったんだろう?
あたしって意外と知りたがりなんだな。
またあたし自身も知らないあたしが顔を出す。
「あぁ。」
その慎の一言で考え事に耽っていた意識が呼び戻される
「じゃあこれで準備はできたよ。あとはアキ達次第かな」
アキ?誰だろう?
あたしは知らないことだらけで本当にここにいていいのだろうか?
…でもどこまで知っていい?
「じゃあ千晃ちゃん。」
「はいっ」
いきなり敦先輩から声がかかったもんだからびっくりしてしまった
「ふふ、海は明後日だよ。準備しておいてね」
「明後日!?」
これまた急だな!
待て待て今日と明日で3泊4日の荷物を用意するのは無理がある。
それにあたしは肝心なものを持っていない。
どうしたものか…
明日買いに行くしかないよね…
でもどんなの選べばいんだろう?
ムムッと腕を組んで考える
そんなあたしに何か勘違いをしたのか
「どうかした?何か予定があったかな?」
見上げると心配そうな敦先輩の顔があった
「ケッ、おいチビブス。そんな予定なんか全部断っちまえよ」
蓮が肩に腕を置き、な?とか言ってくるけどそれってすごく横暴だよね。