人魚の涙〜マーメイド・ティア〜



「千晃ちゃん、これなんかどうかな?」



そう言われて振り向くと



「可愛い!!!」



黄色と白のシマシマのビキニで下はデニム生地のズボンタイプ。


そうそう!あたしが欲しかったのはこういうやつ。



「千晃ちゃんに似合うと思ってね」



あぁ、なんて素晴らしいセンスなんだろう。
3泊4日の服もだいたい敦先輩がこんなのは?と薦めてきたものばかり


あの海に行く会の名前をこの人がつけたのに、なぜ服のセンスだけいいのだろうか。


実に残念だ。



「…千晃ちゃん、今すごく失礼なこと思ってない?」



ヤバい!心を読まれている!!



「滅相もない!!!」



敦先輩の後ろに黒い死神が見えた気がしたので全力で謝っておいた。


そんなこんなでお買い物を楽しんで買いたいものは大体揃った。



「なぁ、腹減らね?」


「俺もおなかすいた!!」



蓮の言葉に真っ先に反応したのは波瑠で2人ともお腹がペコペコだとアピールする。



「そういえばお昼も食べずに買い物に付き合わせてたよね、ごめん!」



あたしが慌てて謝ると



「気にしなくていいよ。落ち着いたら空腹に気がついただけだろうから」



クスクス笑ってフォローしてくれる敦先輩はやっぱり紳士だ。



「…飯食うか。」



慎の一言であたし達はフードコートまで移動を開始した。


フードコートまでやってきたのはいいんだけど…



「ちょ、ふざけんな!それ俺が大好きで最後までとっといたやつなのに!!」


「そんなことしらねぇよ。俺様の目に見えるところにあるのが悪いんだろーが」


「蓮~、波瑠を虐めるなって~。波瑠も頑張って大きくなろうとしてるんだから~」


「なんだと奏太!俺は充分大きい!お前らが無駄にでかいんだ!」



あぁ、アホくさ。


どうしてどこに行ってもこうもうるさいんだろうか。
このアホトリオは。


あたしの前に座った蓮、あたしから見て右に波瑠、左に奏太が座っているがご飯のおかずの取り合いでまたケンカが始まってる。



「ほんと、静かにご飯たべれないんだから」



あたしはため息交じりで思っていることを吐き出す



「ごめんね、高校生になってまでこんなことしてて呆れるよね」



あたしの左側に座る敦先輩が申し訳なさそうにしてる


この人にこんな顔をさせるこの3人はほんとにアホだ。



「敦先輩もお守りが大変ですね」


「わかってくれて助かるよ」



そんなあたしたちの会話にも気付かず言い争いを続けてる蓮たちにまた呆れ返る。


だけどそんな言い争いは誰かの携帯の着信音で静まり返った。


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