人魚の涙〜マーメイド・ティア〜



こ、これが…!!!



「海…!!!」



あたしは乗ってきた車が止まると一目散に扉を開けて海に駆け出した



「ふふふっ、千晃ちゃん嬉しそうだね。」


「あぁ、連れてきてよかった。」



後ろで敦先輩と慎があたしを見て微笑んでるなんていざ知らず初めて見る海にあたしは釘付けになっていた。



「千晃ー!待ってー!」


「海でこんなにはしゃぐなんてガキかよ」


「まぁ可愛いらしいじゃん~」



波瑠があたしの後を追ってくるのがわかる。


あたしは振り返ってみんなを呼ぶ



「早く!ほら、慎と敦先輩も!」



車のところでいつまでもこっちを見ている2人も呼ぶ。


でもなぜか赤面してみんな固まって動かない



「千晃、今ので俺も呼んで!」



目を輝かせてあたしのすぐそばまで来てた波瑠にせがまれる



「チッ、んなの呼ぶ必要ねぇーぜ。」



蓮があたしの腕を引いてさらに海へと近づいていく



「あ!何すんだよ蓮!」



意味がわからずとりあえず蓮に腕を引っ張られるのでつられて足を進めた



そう、今日は待ちに待った海なのです



あたしにとっては初めて見る海に大興奮なわけで
すごく綺麗で澄んでて青々しくて…


景色に見とれて何も考えずバシャバシャと海の中に足を進めてく



「待て千晃」


「へ?」



慎の声がして振り返ると呆れた顔していた



「服のまま入るつもりかお前は。」



あ。



「あぶなっ!興奮しすぎてそのまま入っちゃうとこだった!ありがとう慎!」



あたしは慌てて海から出ると更衣室に向かって歩き出す。
後ろからあいつ本物のバカだとかなんだかんや言われてるけど気にしない。


それくらい今のあたしは海というものに入りたくて仕方ないのだ。


さっさと着替えて海に入ろうと思い更衣室の扉に手をかけて開ける



「あ!千晃ちゃん今開けちゃ…!」



敦先輩の制止の声と同時に扉を開くとそこには



「きゃぁぁぁぁあ!」

「うぉぉぉぉおお!」



あたしの悲鳴と男たちの奇声が被って辺りに響き渡る



「んだ!どうした!?」



慌てて蓮が一目散にかけてくる



「ら、裸体、お、男!」



あまりにびっくりしすぎて説明できないあたしの横にスッと敦先輩が現れて扉を閉める。



「ごめん、千晃ちゃん。言い忘れてたんだけど千晃ちゃんの更衣室はここじゃなくて裏手にあるもう1つの方なんだ。」



敦先輩が申し訳なさそうに謝る


だけどちゃんと確認しなかったあたしも悪い



「ご、ごめんなさい!びっくりして取り乱しちゃいました。ちゃんと説明も聞かずにすいません!」



海に来て浮かれてたあたしの頭は今の衝撃で通常運転に戻ってきた



「千晃ー、お前荷物持たずにしかも男の方の更衣室行くなんてもしかして痴女~?」



いつの間にかあたしの水着の入った荷物を奏太が持ってきてブンッと放り投げてきた



「わっ!ありがとうって言いたいけど嫌味が含まれすぎてて言いたくないんですけど」


「ほんとのことだもーん」



手をヒラヒラさせてふざけるこいつを殴りたい
それに誰が痴女だ!


奏太に蓮も加わって痴女コールをし出す


なので思いっきり2人に回し蹴りをお見舞いするがサラッと避けられて余計に腹が立つだけだった。



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