人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
なんてこった。
「痛い…おい、待て。」
また忍び足でその場を去ろうと試みたけどダメか。
捕まってしまった。
「お前、誰だ。」
そろーり後ろを振り返ると
ーッ!悪魔がいる!
うんともすんとも言わせないほどの真っ黒なオーラを放つ彼はその輝かしい金髪とは真逆のどす黒いオーラを放ちすぎている。
殺される。確実に。
そう思ったらあたしの足は全力疾走をし始めた。
おい!あたしの足!初めて気が合ったな!
そう!逃げなきゃ殺される!
いつも相手に蹴りばかり不本意にかましてしまう足と初めて気が合ったことにびっくりしつつ逃げる。
だけど。
ー…サッサッサッ
おいおいおい、待て待て待て。
後ろからなんとも爽やかな足音が聞こえてくる。
振り返ればそこには…
「ぎゃぁぁぁぁあ!悪魔がぁぁぁぁ!」
あたしが投げた金髪が顔色1つ変えずに追いかけてきていた。
嘘でしょ!嘘でしょ!!???
そんな綺麗な走り方でそんな早く走れんの!?どんな足ですか!!
そんなこと考えてる場合じゃない!逃げろ!!
ひぃぃぃ!殺される!
捕まったら間違いなくあの世行き決定!!
とにかく西棟まで全力で駆け抜けなければあたしの命はない!
てか、なんで職員室が3階にあるんだ!
橋が1階にしかないなんて!
あたしは急いで階段に向かう。
だが、虚しくも徐々に悪魔とは差が縮まりつつある。
でも階段まで行けばあたしに勝機はある。
「おらぁぉぁぁ!」
やべっ、つい必死すぎて変な掛け声出たけど気にしない
階段に差し掛かる。
ー…よっしゃ!いっけぇぇぇ!
ドンッ!!!!
「…お前どんな身体能力だ。」
階段の上で掴みきれなかった腕が行き場なく彷徨わせている悪魔は初めてそこで表情を変えて、呆れたような顔をする。
そう、これがあたし自慢ピカイチの身体能力。
「捕まえれるものなら捕まえてみな!鬼さんこちら〜ベェー!」
あたしは逃げ切れる自信を持った。
だって彼にはきっとできないだろうから。
ー…何十段とある階段をたったの一っ飛びで降りるのは
が。
ストンッ。
目の前に輝かしく澄んでいる金髪の悪魔が舞い降りた。
はい、悪魔降臨ー!
「…上等だ。」
本日二度目のオゥマイガー。
何故あたしは挑発なんてしてしまったのだろう。
あぁ、これも癖なんだろう。
小学生を相手にしてる時みたいについやってしまった。
「…ッ捕まるか!」
身を翻して、また飛び降りようと足に力を込めた刹那
ー…グラッ
あ、ここでアレの効果が発揮されるなんて。
おしまいだ。落ちる。
「おいっ!」
その声とともに落ちるという恐怖からか悪魔から逃れられないという恐怖からなのか意識が切れた。