人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
「ああああぁ~、すんごい疲れた…」
あたしは暖かいお風呂に浸かりながら今日のことを思い出す。
みんなに紹介されても拒まれなかったこと。
少しだけどみんなのことを知れたこと。
…そして、慎がみんなに少し打ち解けられていたこと。
こんだけ全力になって遊んだかいがあったというものだ
最後なんてみんなで誰が敵か味方か分からなくなる始末だった程ハチャメチャだった
「…楽しすぎるよ」
瞬きをした瞬間目から何かが零れ落ちた気がしたけど、それはただ温泉の滴だ。
でも思い返すと最後の方波留の姿が見えなかったな
旅館に戻ってきてからもその姿は見ていない。
何かあったのだろうか?ここ最近の波留は元気がないのは分かっていた。でも、来た時普通に笑ってあたしとも遊んでくれたから大丈夫だと思ってたんだけど…
考えすぎかな…
まぁ、お風呂から上がったあとご飯をみんなで食べるつもりだからそのときにはいるだろうから、そのときに様子を見ればいいか。
そう思いながらザバッとお湯から出て上がった
お風呂から出るとすでに敦先輩からLINEが入っていて
【先に桜の間に行ってるね。ゆっくりでいいからあがったら来てね。】
桜の間とはご飯を食べる予定の場所のことだ。
ということはみんなもう待ってるかもしないってことだ
「やばい!いそがなきゃ!」
急がなくていいって書いてあったけどやっぱり待たせるのは悪いと思ってしまう
バタバタと準備して急いで出る。
部屋に荷物を置きに戻って桜の間に急ぐ。
襖を開けると既に集合していた
ズラッと縦にみんな座っている
「千晃ちゃん!こっちこっち!」
敦先輩が私の姿を確認して手招きをしてくれる
「よっ!ちーさん、おふろどーだった?」
「最高だったよー!」
敦先輩たちが座っているのは奥の方なのでみんなの横を通ると声をかけてくれる、それが私には凄く温かい
「すみません、お待たせしました。」
なんとなく慎と蓮の間に座ると
慎の前に座る敦先輩が微笑んで迎えてくれる
「全然気にしなくていいよ!さっ、食べようか!」
どうやらやっぱり待たせていたようだ。
でも目の前が空席なのが気になる
「あの、波瑠は?」
1番答えてくれそうな敦先輩に尋ねると先輩は困ったように笑い
「んー、寝てて起きなかったから後でご飯持ってくから大丈夫だよ」
「…そうですか。」
多分きっと、嘘だ。