人魚の涙〜マーメイド・ティア〜



「お前んちのかーちゃん、また男と歩いてたよな!そーいうのなんていうかしってるか?インランっていうんだぜ!」



俺が小学生のときにはもうこんな風に言われていた。


言われる度に怒っては言ってきた奴を殴って担任にも相手の両親にもすごい怒られた。


親を連れてこいと言われても俺の母さんは来なかった。


じゃあ父親っていわれたけど、俺の記憶がはっきりする頃にはもういなかった


一回だけ不思議に思って聞いたことがある



「母さん、どうして俺には父さんがいないの?」



その瞬間体が吹っ飛んだ



「二度とそんなこと聞くんじゃないよ!!」



母さんが初めて俺に向けて怒った。
それまで一回も怒られず、笑顔も向けられたことはなかった。
ただの一度も。そのことはなぜだか子供ながらに覚えていた



母さんの男遊びが町で有名だったってこともあって俺は煙たがられ友達なんて呼べる人はいなかったけどもう1つ、俺には友達ができない理由があった。



それは



「お前の目、なんで左右で色が違うんだよ、気持ち悪りぃー!」


「髪の毛もなんで染めてんだよ!」



この色違いのオッドアイ。
それからみんなとは異質の銀色の髪。


なんで俺だけ違うんだって俺自身も思ってた


そして母さんも毎回俺をみて言うんだ。



「私を捨てたあの人にそっくりなその青い瞳、その銀色の髪…全てが私をイラつかせるのよ!どうして私じゃなくてあの女なのよ!」



そのスイッチが入ったらもう母さんは止まらない。


ひたすら気がすむまで俺を殴り続けていた。


その時思った。


俺がこんな風に生まれてきちゃったから母さんは俺を愛してくれないんだ。だったらこの瞳も髪も変えてしまえばいい。母さんみたいな綺麗な黒髪、真っ暗な瞳にしてしまえばいいんだと。


そこで俺は初めて母さんにワガママを言った



「母さん、瞳と髪を変えたい」



その時の母さんの顔は少し情けないような、切ないような、まだ小さい俺にはそれがどんな感情で出た表情なのかは分からなかった


中学に上がる前に右目に黒のカラコンをいれ、髪も黒染めをした


でも街を出たわけじゃないから中学にあがっても俺に友達はいなかった


だから俺は人を思いやる心なんて持ち合わせてないし、グループ行動が多くなるにつれてさらに浮いていくだけ。


家に帰っても母さんはいつもいない、学校に行っても空気みたいな存在で誰も俺には構いもしない。


そのせいなのかよくわかんないけど、いつの間にか話すってことを忘れて声の出し方も分からなくなった


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