人魚の涙〜マーメイド・ティア〜



気が付けば俺がどんな声でどんな喋り方をしてたのか自分でわからなくなるほど、母さんとは一緒に住んでてもほとんど顔を合わせることなんてなかった。


同い年のやつらも、いじめてももう表情すら変えない俺に飽きたのか誰も関わってこない。


母さんもたまに帰ってきて俺が瞳のコンタクトを外しているときに出くわすとひたすら気が済むまで殴り続けていた。


きっとそのときも俺は無表情だったと思う。


だから母さんは気がすむまで殴り続けた後に必ずこう言った



「…泣きもしない、声も上げない…なんて気味の悪い子」



もう俺には何が正解なのか全く分からなかった。


今でもあの時の感情は分からない


ただただ“無”だったんだと思う。


でも、そんな生活がある日を境に一変した。
中学二年になってしばらくした頃だった



「なんだ、このクソガキ。」



それは俺が聞きたい、あんたこそ誰だ。
そんで、なんで家に上がり込んでいる。



「気に食わねぇ目だな。」



その言葉が聞こえた瞬間俺は吹っ飛ばされた



「っうぁ…」



吹っ飛ばされて痛みなんていつの間にか忘れていたはずなのに蹴られたお腹に激痛が走った。


たぶんだけど、肋骨が折れたんだと思う
その頃の俺には学力もほぼほぼ皆無だったからなんでこんなに痛いのかよくわからなかったし、俺の声っていつの間にか低くなってたんだって初めて気が付いた


とにかく頭の中がパニックだった


その男はどうやら今母さんと付き合ってる人で俺が目の前にいるのにも関わらず、そういう行為をしていた。


耳を塞ぎたくなるような生々しい音も母さんから聞いたこともない声でその男の名前をひたすら呼んでいた


それからその男は俺が学校が終わって帰ってくるとほとんど家にいた。いない日はパチンコに行ってたんだと思う。


もちろんそのパチンコ代は母さんから出ていて、男は働いている様子はなくて。


もっと最悪だったのは


知らない女が家にいる時だった。


母さんとその男の行為を見るのも嫌だったのに、知らない女と知らない男が交わる姿を見せられることだった。もうここが家なのかなんなのかよくわかんなかった


そして知らない女はその男がスッキリして寝入ると



「ねぇ、僕ちゃん。楽しいこと、したくない?」



そのまま俺の初めては無くなった。



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