人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
それで母さんが助かるならって俺はあらゆる引き出しをひっくり返して荒れていた部屋をもっと荒らした。
「あった!!!」
注射器と液体の容器を見つけると母さんが“いつもやってる”みたいに容器に針を刺して液体を中に入れて母さんに手渡す
「母さん!薬だよ!」
でも母さんは腕を俺の方に伸ばして
「は、はや、く、う、て」
もう呂律もうまく回らなくなった母さんが俺は可哀想だと思った。だから早く楽にしてあげたかった。そしてまたその腕で抱きしめて欲しかった。
医学の知識がない俺が適当なとこに打っていいのかわかんなかったけど母さんがいつも打ってて黒ずんでいるところだろうと思い、針を刺し液体を母さんの中に流し込む。
その瞬間母さんの顔はホッとしたかのように微かに笑った
だから、俺も安心した。
そんな安心も束の間母さんがいきなり目を見開いてえづき出した
「母さん!!!!」
どうして!注射を打ったのに!俺の打ち所が悪かったのか?それとももっと早く打たなきゃいけなかったのか?なんでもいい!誰か母さんを助けてくれ!!!
母さんは身体は小刻みに震え始めた。
今思えばあれは痙攣だったんだろう。
もう俺はどうしたらいいのか分からず外に飛び出て誰かの助けを必死に叫んで呼んだ
そこからはもう何もかもが早く流れた
母さんが使っていた薬は、麻薬だったこと。
俺が打ったこと量は母さんにとって致死量だったこと。
いや、もうそもそも限界な量を使い込んでいた。
それはそうだろうと思ってた
…だって母さんが笑顔を初めて俺に向けてくれたのはもう1年前からだった。
そうして母さんは麻薬専門の病棟に移った。
病棟に移る前にいた警察病院でも母さんに会うことはできなくて、病棟に移ってからもしばらくは会えなかった。
担当医の山中先生は俺が一人でいつも病院に来ていたことを知っていて母さんに逢わすことができない代わりに俺に気遣っていろんな話を聞いてくれたり、聞かせてくれたりもした。
そうして母さんが入院してから2か月が過ぎたころ
山中先生が俺と母さんの面会許可を出した。
「波瑠くん、やっとお母さんに会えるね。やっとお話しできるね」
そう優しく微笑んでくれた。
俺も嬉しくなって頷き返したけど、現実はそんなに甘くない。