人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
ふわふわ揺れて心地がいい。そしてなんだか暖かい。
ふわふわ…?
はっ!としてがばっと起き上がる。
「ここは…保健室?」
視界を開けて周りを確認するとたまにしか来ない西棟の保健室だった。
あたしなんでここにいるの?
「あら、春山さん起きた?もう!また貧血起こしてー!起こす前に無理しないことっていつも言ってるじゃない!先生の言うことはちゃんと聞いてよ」
若干パニックのあたしに御構い無しに話しかけてくるのは保健医の先生。
「あの、先生。あたしいつここに来たの?」
あたしの質問に一瞬キョトンとする先生
「覚えてないの?貧血起こしたあなたをフジワラくんがここまで運んで来てくれたのよー。あの子が人を運ぶなんて珍しい日もあるのねー。」
ふふふっ、と可愛く微笑む先生はこちらの気持ちまで癒される。
じゃなくて!危ない!あたしまでのほほーんとしてしまうところだった!
あたしは最新の記録をたぐり寄せる。
ー…あっ!
あの金髪男!
そうか、あいつと鬼ごっこしてて貧血を起こしたのだった。確か階段から落ちるとき…。
あたしは慌てて身体中を見る。
「…アザがない?」
落ちたらアザとか傷が1つあってもいいはずなのに無い。どういうことだ?
頭に?マークがたくさん並ぶ
パァァンッ!
「千晃!」
その音とともにあたしの名前を呼び騒々しく入ってきたのは麻奈実だった。
「あっ、麻奈実ー!」
ヒラヒラと手を振るあたしにチョップをかましてくる
「何呑気にしてるのよ!ばかっ!心配したわ!」
「いててて。ごめんってー。鬼ごっこしてたら貧血起こしちゃった」
「ノート運ぶだけなのに何してきやがった。」
麻奈実が白目を向きあたしに説教モードが始まる。
それをあたしは正座をしてはいはいと頷いていると
「春山千晃ちゃんって子いるー?」
麻奈実が開けっ放しにしていたドアから入ってきた男はどこか品があってカカオブラウンの髪に程よくパーマがかかっていてどことなく妖艶さを含んでいた。