人魚の涙〜マーメイド・ティア〜



チャプン…


チャプンッ…



どれくらいそうしていたのかわからないけど、波瑠は泣き止み波だけがあたしたちに優しく当たる音を響き渡らせていた


でもさすがに寒い。夏だけど日はない夜だから何時間も海に浸かっていたら体が冷える。


腕の中にいる波瑠にここから移動しようかと声をかけたいんだけど、なんとなく波瑠が顔をあげるまでは声がかけづらくどうしたもんかと悩む


そんで、さっきから我慢してるのはくしゃみと生理現象だ。


我慢にも限界というものがある…さぁいよいよ我慢できなくなってきた


それに波瑠もきっと寒いだろうから勇気をだして声をかけてみるか…



「ねぇ波瑠、そろそろ…-」



バシャっ!



後ろで何かが海に侵入してきたような音がして振り返ろうとした途端抱きかかえられ波瑠が腕の中からすり抜ける



「わっ!!…あれ、慎…?」



私を持ち上げた人を見ると
珍しく焦っている慎がいた。


慎はそっと額をあたしの首元に近づけてさらにきつく抱きしめる



「…ばかやろう、いなくなるんじゃねぇよ」



あぁ、あたしはほんとにばかやろうだな。


いつも堂々としている慎を震えさせて、こんなにも全身で心配させて何してるんだろう。



「し、「お前もお前だ、波瑠。」



急に申し訳なくなって呼び掛けようとしたけど慎によって遮られる


波瑠はピクリと体を揺らして顔をあげない


責められてるみたいな言い方をした慎に慌てて弁解しようと思ったけどその心配は必要なかった



「…いなくなったら、困る。」



その言葉を聞いた瞬間、慎も素直じゃないなって思ったのとやっぱりみんなも波瑠のことが大切なんだなって


だって


「しーん!!早く千晃ちゃんと波瑠を引き上げてきて!」


「早くしろよー、こっちは腹が減ってんだからよぉ!」


「そーそー!食い損ねてるんだから~」


敦先輩、蓮、奏太…みんなが迎えに来てくれた


それを見たら自然と顔が緩む。


同時に気が抜けたのか瞼も重くなる



「…何笑ってんだ」



ムスッとした顔の慎がかすかに瞳に映る


だってみんな、波瑠のことが大切なんだなってここまで迎えに来てくれるってことはそういうことだよね?よかったね、波瑠。


その瞬間あたしは眠りの世界に堕ちた



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