人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
「んっ…あれ…」
目を覚ますと六畳ある和室に寝ていた
「千晃ちゃーん?起きた?」
この声は、人物を想像したのと同時に襖が開く
「あ、起きてるね。おはよう、よく眠れた?」
爽やかな笑顔とともに入ってきたのは敦先輩で
「はい、なんか寝過ぎたような気もします」
今何時だろう?いつも以上に寝た気がしたけど
「いつまで寝てんだ、ブス。もう14時だボケ!」
敦先輩を押しのけてドカドカとあたしに近づいてしゃがむ
何するのかと思ったら
ー…ゴツッ!
「っーーー!いったぁぁぁー!」
コイツ、乙女の額にデコピンしてきやがった!!!
しかもかなりな音だったぞ今のは!!!
「ちょっと!!まじ額ヘコんだ!!何すんのさ!!」
強烈な痛みに涙が出てくる。まぁ、そのおかげで完全に寝ぼけ眼だったのが冴えたんだけど
「…ほらよ。お前、これ大事なんだろ?」
デコピンしたことに対して抗議しようと思ったが目の前にぶら下げられたものを見た瞬間どうでもよくなった。
「…ッこれ、どこに…」
蓮が手からぶら下げていたのはあたしが死ぬほど大事にしていたネックレスで。
「女湯に落ちてたんだとよ。チビブス、ちゃんと確認して…おわっ!」
あたしはいてもたっても居られずにそのネックレス事、蓮に飛びついた。
咄嗟のことにも関わらず蓮はちゃんと抱き留めてくれた。
「…あり、がとっ!」
「おい…チビブス…、泣くなよ、ったく。」
そう言いつつも首にネックレスをかけてくれてあやす様に背中をポンポンしてくれた
でもほんとにこのネックレスが見つかって良かった…
しばらくして冷静になってくると波瑠のことを思い出した
「ねぇ、波瑠は!?」
あの後確かみんなが迎えに来てくれて…あれ?どうやって海から出たんだっけ?
慎にすごい心配そうな顔をさせたことは覚えてるけどそのあとの記憶がすっぽり抜け落ちている
そんなことを考えていたら頭上からあきれた声が聞こえた
「おい、チビブス。いいから離れろ、鼻水つけやがってきたねぇーな!」
蓮の声にハッとして慌てて離れるがなんとなく照れ臭くなってお礼を言う前に反撃してしまう
「は!?むしろ乙女に胸かせたことを誇りに思ってほしいくらいなんですけど!!蓮の人生にこんなこと一生起こりえなさそうじゃん!!」
あぁ~!しまった。ここは素直にお礼を言えばいいのにと後悔したのも後の祭りで、蓮の顔はみるみる怒りに染まって青筋が見えてきた
「てめぇ…上等だ!表出ろ、このクソデブ!!」
「はぁん!?チビデブでも飽き足らずクソもつけるとは!なんて失礼な奴なの!!その勝負受けてたってやるわよ!!」
勢いよく立ち上がってやろうとしたら思いっきり体が傾いて尻もちをついた
そんな様子をみた蓮は鼻で笑い、やれやれ顔で見ていた敦先輩が慌てて近寄って手を差し伸べてくれた。
「ほら、二人ともやめなよ。波瑠なら隣の部屋で寝てるよ、心配なら見てくれば?」
にっこりと笑ってあたしをしっかり立たせてくれる。
その握ったままの手につられて隣の部屋に移動する。