人魚の涙〜マーメイド・ティア〜



部屋に入ると静かに窓際に座る慎とテレビを見てる奏太がいた



「よぉ~、ちーちゃん。起きたのかい~」



相変わらず気だるけに喋る奏太とその声に反応して閉じていた瞳をこっちに向ける慎。


慎はまるで絵になるように窓際に座っているので見つめられると息をするのが苦しくなるほど綺麗だ


その綺麗さに嫉妬しない女はいないだろうと思う



「おはよう。てか、ちーちゃんって何。」



奏太の呼び方にゾッとしながらも部屋の隅で寝ている波瑠に近づく



「これからそうやって呼ぶことにしたよ~、まぁこまけぇことは気にすんなってことで~」



もうあたしに興味がなくなったかのように蓮に話しかけこの女優は何カップだのくだらない話をし始めたのでとりあえず無視した


目の前でスヤスヤ眠る波瑠の額をそっと撫でる。


あの時、海に波瑠がなんの戸惑いもなく進んでいった時のことが今でも鮮明に蘇る。



ー…お願いだから、死のうなんてしないでね。



あなたには、あなたたちにはたくさんの未来が待っているんだからこんなとこで終わってなんかほしくない。



ー…どうか、その命尽きるまで走り続けてほしい。



パシッ!!



波瑠の額を撫でていた手をいきなり横から出てきた手に掴まれてビクリと体が揺れる。掴んできた人を見ると



「…どうしたの、慎。そんな怖い顔して。せっかくの綺麗な顔が台無しじゃん。」



何かを見透かすような瞳と目が合って慌てて茶化す



「…お前ほど綺麗じゃない。」


「ぶっ!!」



あたしが吹くのと同時ぐらいに蓮が勢いよく間に割り込んできて慎とあたしを引き離す



「おい、慎!!おめぇの目は正気か!??こんなチビブスでくそデブのどこが綺麗なんだよ!お前はもう末期だ!眼科に行こう!今すぐだ!!」


「おいおいおい~、われらが慎様が等々イカレちまったじゃねぇーの、どう責任取ってくれるのちーちゃん~」


「えぇぇぇぇ!?あたしのせいなの!?確かに眼科行くことはあたしも賛成だけど慎の頭がいかれてるのは元からじゃないの!?」


「千晃ちゃん、なかなかひどいこと言うね。」


「お前ら、上等だ…」



いつの間にかさっきの重たい雰囲気はなくなり、またワイワイと騒ぎ始めていた



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