私だけのアナタ
第一章 〜出会い〜
忠告
どうかしてる。
スラスラと目の前の男は私の手のひらに線を描いた。
「これはヤバイね。君は早くに結婚しそうだけどすぐに離婚しちゃうよ」
そう言ってペンのキャップを閉める。
『芸能人御用達!〜17時まで無料手相診断中〜』
入り口にそう書かれた文字に、何故か引き寄せられてしまった。
入ってみるとやっぱり胡散臭くて、たくさん並んだアクセサリーを見ると大金を支払う羽目になりそう。
適当に話聞いて、こんな店さっさと出よう。
そう決めた途端、占い師は口を開いた。
「今まで恋愛でうまく行ったことないでしょ」
ドキッとした。
どうしてわかったのか。やはり手相がそう示しているからなのか。
「あとはお姉さん、肩凝りやすいね。後は肝臓が悪いからお酒控えてね。ちなみに未成年だよね?色んな意味でお酒はやめた方がいいよ」
す…ごい。見事に全部当たってる。
「あ〜、あと。人の話は最後までちゃんと聞いてね。お姉さん頭の回転早いからすぐに自己解決しちゃって人の話最後まで聞かないでしょ」
ここまで当てられたら笑いしか出ない。
現に隣で一緒に聞いてる友達も笑っているんだから。
「それとね、隣のお姉さんは自分のことにならないと興味持てないでしょ?今も実際早く終わらせて帰りたいって思ってるはず」
「えっ、バレた…」
「わかるよ。手相に全部出てるから。まぁ気が向いたらまた来てよ。あと3ヶ月はここにいるからさ」
私は立ち上がり店を出ようとした。
「あ、お姉さん。今の彼氏とは早めに別れた方がいいよ。だってお姉さん好きじゃないでしょ?」
「はぁ…」
彼氏…いるけど、好きだよ?
やっぱりこの占い師は信じないでおこう。
「間違えた!今は好きでも明日には別れたくなってるから」
…なんて失礼な人なの!
「わざわざ忠告ありがとうございました!」
そう吐き捨て、私と友達は店を出た。