私だけのアナタ
「で?あんたの彼氏の話を聞かせなさいよ」
待ってましたと言わんばかりに紀穂が目を光らせる。
「出会いは友達の友達で…」
今年から女子大に進学した私は、思った以上に出会いがなくてびっくりしていた。
友達関係は良好すぎるくらい良好だったある日、友達にメッセージが届いた。
『奏ちゃんって子、可愛いしタイプだわ。紹介してよ』
見せてもらうとそんな内容が送られて来ていた。
どうする?とは聞かれたけど出会いを求めた私は即了承してしまった。
…してしまったって言ったら、嫌々付き合っている風に捉えられそうだけど、その彼のことはちゃんと好き。
「どこが好きなの?」
「んー。優しいし私のいうこといっぱい聞いてくれるとこ」
「出たよ、奏の悪いとこ。そんなだから恋愛下手って言われるんだよ」
「え?なんで?」
「それさ、その人じゃなくてもいいじゃん?」
「あー、確かに…。でも!」
「『でも』はダメ。あんたはもう今までと同じ失敗は繰り返さないんじゃなかったの?」
「はい…」
「あんた、それはもう好きじゃないからとっとと別れなさい!」
「え…でもせっかく出来た彼氏だし……」
「だーかーら!それがダメだって言ってるの!」
紀穂さん、怖いです…。
「わかった。でもまだ少し時間欲しいな」
「仕方ないなぁ。2年ぶりの彼氏だもんね」
よし、これでまだ彼氏と別れないで済む。
って私、何やってんだろ。
『彼氏』っていう存在がいることに安心しちゃってる。
まぁでも、これから好きになるかもしれないし……ね!