最後のキスが忘れられなくて
退社日がやってきた。

チームリーダーのアッコ先輩から花束を頂いた。

「岸本さん、お疲れさま。あなたの欠員は頭痛いわ。」

「アッコ先輩、今までお世話になりましてありがとうございました。」

私はスタッフ皆の前で丁寧にお辞儀をした。

私物を持って社を出た。

退社理由はもちろん契約期間満了であったが

他に資格を取得して他業種に挑戦したい旨も話してあった。

職場は特に違和感なく離職できた。

帰宅後花束は母に渡して部屋にこもった。

周一にはその夜メールで伝えた。

今日が退社日で

近日中にカナダへ旅に出ることを。

返信はなかった。

既読すらない。

きっとまた飲み友達と意気投合なのかと思い

また帰国する予定だし

その時に話してもいいし

私はかなりあんちょこな考えでいた。

カナダへは大学の時に留学生として利用したホームステイ先の紹介もあり

短期の旅行ビザか長期で一時帰国も再入国も可能である。

気持ち的には自由な身を

将来的には再就活の不安を

その両方が私の中に入り混じっていた。

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