御曹司に身分違いの恋をしました。


手がとても暖かかった
ふとその手を見ると山口さんがいた。


ベッドの横に椅子を置き
私の手を繋いで顔を伏せている。


どうやら寝ているようだ。


ここは山口さんの家?
いや。。。違うよな
病院か?


なぜ山口さんがここに?
母は?川相さんは?


責任を押し付けたから
ここに居るの?


自分の意思ではないはず
きっと川相さん・・・実の父が
無理矢理ここに居させているのだろう。


私はこの手を取れない
これからの人生にこの手は必要ない
山口さんを解放してあげなければ。


握られてた手をそっと離すと
山口さんが目覚めた。


「愛華!大丈夫か?」
私の顔を覗き込んだ。


少しボーとする。


私は記憶がないことにしよう
それなら山口さんが責任を
負わなくて済む そう思った
でも!それはできなかった。


「1人にしてもらえますか?」


「ちょっと待って」
と山口さんはナースコールを押した。


「大丈夫ですか?」
すぐに看護師が駆けつけてきた。


「少しボーとします」


「1日目が覚めなかったからですね」


「1日もですか?」


「でも!大丈夫ですよ
かなりの疲労とストレスで倒れられただけで
どこにも異常ないしもちろんお腹のお子様も
大丈夫ですよ 安心してください」


「よかったです」


「ずっと旦那様は
付いていらっしゃったんですよ
優しい旦那様ですね」


旦那様じゃない。


「あのぉ〜
もう連れて帰っていいですかね?」


連れて帰る?あの家に?
冗談じゃない!
両手広げてウエルカムじゃないあの家に
ノコノコと帰ることは出来ない。


自分だってあんなに私を拒否したじゃない
帰ってくれと言ったじゃない
なのに今更何?


「いえ 明日までは入院になってます
検査結果は異常ありませんが
ゆっくり休んだ方がいいと
医院長がおっしゃってましたので
それはできません」


医院長とは川相さん実の父のこと。


「わかりました」
と山口さんは看護師さんにそう答えた。



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