きらきら星に魅せられて

天才少女 復活

もう誰の声も耳に入れない。

ただあの頃のように前を見据えてあの舞台へ進んでいくだけ。

「こんにちは。もう私たちが負けだと決めつけている人もいるでしょうが、私は必ず勝ちます。ピアノはとある事情でやめてしまいましたが、数年間習っていました。今日この舞台で私はまた復帰します。たくさんの方に感謝と謝罪の気持ちを込めて、一生懸命弾かせて頂きます。曲は当初の予定を変更して2曲弾きます。どうぞ最後までお聴き下さい」

椅子に座り、精神統一をする。

もう何百回も何千回も何万回も弾いた私の代名詞とも言えるきらきら星変奏曲。

さぁ、弾き始めよう。

もう後悔はしない。


私が弾き始めた途端に起こるどよめき。

でもそれも段々と静かになり、私の演奏を聴いてくれているのがわかった。

久しぶりの舞台は楽しくて仕方がなかった。


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