きらきら星に魅せられて
1曲目のきらきら星変奏曲を弾き終わり、次のラ・カンパネラを頭の中に思い浮かべる。

高音を私の得意な煌めきに溢れた輝かしい音色で響かせる。

“自分の演奏をするのよ”

これが私の演奏だよ、先生。

見ていてくれてますか?


弾き終わったあとは清々しさでいっぱいだった。

呆気にとられたような観客から徐々に拍手が湧いてくる。

私.....舞台に立ってる。

それを噛み締めて涙が出そうだった。

観客からの声援と拍手にメガネとウィッグを外し、素顔を晒した。

一層盛り上がる会場。



それが一段落した所で私はマイクを手にした。

「お察しの方も多いかと思いますが、森本紗夜です。私は先程申し上げたように、とある事情でピアノをやめてしまいました。ずっと過去に縋り、現実を受け止められなかったのです。でももう前を向きます。私の恩師、堀田郁花先生との約束であるショパンコンクール優勝という夢を必ず叶えます。最後にご迷惑をかけた皆様、本当に申し訳ありませんでした」

深々と会場に向けて頭を下げた。

私は許されないことをしたから。

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