きらきら星に魅せられて
そうこう考えているうちに第3楽章までも終わっていた。

続けて弾き始めた曲はショパンのエチュードより、通称“黒鍵”。

.....どうして。

今日の星羅ちゃんの行動は訳がわからない。

黒鍵は私が最後に出たコンクールで弾いた私にとって因縁の曲。

だってあの日.....。

だめだ。

考えちゃいけない。


なんで?どうして?

疑問しか湧いてこない。

わざとこの曲を選んだとしか思えないんだ。

だってこの曲は星羅ちゃんにとって得意な分野でもなければ、苦手な分野でもない。

わざわざこの曲を選んだ理由はきっと私に関係している。

やめて。お願い。

ただでさえ泣きそうだったのに。

もうショパンコンクールに向けて1人でもがんばるって決めたのに。

先生のこと思い出させないでよ。

星羅ちゃん。

あなたは今何を考えているの.....?


「真城さんは98点。森本さんと同率1位ですね」

「ありがとうございました」

「テストはここまで。各自休憩にしてください」


休憩になるといつものメンバーが私の元へ来る。

「紗夜。今回は引き分けだったわね」

「.....うん」

「どうしたの?」

「どうして.....黒鍵を弾いたの?」

「うーんそうね。この曲なら紗夜は泣くと思ったからかしら」

「.....え?」

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