きらきら星に魅せられて
「すみません、退けてもらっていいですか?」

そう声をかけられ、通路の邪魔になっていたことにやっと気づいた。

「あ、あぁごめんなさい」


「.....星羅ちゃん。チェン・シーハオのことどう思う?」

「越すしかないわ。負けてられない」

私も星羅ちゃんも最近は国際コンクールなんてほとんど出ていなかった。

小学生のころは少し出たこともあったけど、あまり有名なコンクールではなかったと思う。

だから天狗になっていた。

自分たちは1番だと。

私の敵は星羅ちゃんだけだと。

世界一になる事の難しさを改めて実感した気がする。


突然舞台袖が騒がしくなった。

「カイル・ケネディだ」

「神童と称された男」

「カイル・ケネディ.....。ついに来たわね」

「だれ?」

「ほんとあなたってそういうの調べたりしないわよね。カイル・ケネディはアメリカの神童と呼ばれる男よ。アメリカって言っても国籍がアメリカなだけで顔はどうみても日本人なんだけれど」

「へぇ.....。あ、星羅ちゃんが言ってたアメリカ人の人ってその人のことか」

「そうよ。ほらこっちに近づいてきたわ」

「え?」

釣られて後ろを振り返るとこちらに近づいてくる人が1人。

しかもその人は.....

お兄ちゃん。

「ちょっと待って、星羅ちゃん。どの人?」

「こっちに近づいてきてる人いるでしょう?」

やっぱりそうだった.....。

「よう。紗夜」

「いやっ来ないで.....」

慌てて後ずさる。

「逃げんなよ」

「や、やめて.....っ」

「え、ちょ、知り合い?」

「ううん。知らない人!」

「チッ。ちょっと来い」

「きゃっ」

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