きらきら星に魅せられて
―――自分の演奏をするのよ、紗夜。

不意に先生の言葉を思い出す。

1番 アメリー・ニコラ。

きっとあの人は心からピアノと向き合い、ピアノと戦い、自分の演奏をした。

観客なんて気にしていなかったのかもしれない。

自分の演奏.....とはなんだろう。

私はまだピアノと本気で向き合いきれていない?


コンクール。

それは私の演奏を人に聴いてもらう場であり、評価してもらう場だった。

優勝という目標に向けて観客受けする演奏だけを求めていた。

でもそれで優勝しても、先生は喜んでくれないかもしれない。

ならば.....

居ても立ってもいられなくなり、私はたまらず会場を飛び出す。

もちろん向かう先は練習室。



「紗夜。お前の才能が花開く瞬間を楽しみにしているよ」

そんな私を見つめている人影など、気づくはずもなく。

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