きらきら星に魅せられて
誘惑と戦っていたそのとき、突然ガラッと乱暴にドアが開いた。

「の、野山くん。ごめんなさい!」

「別にいいけど。.....お前、ピアノ習ってんの?」

「昔少しだけ.....」

「聴かせろよ」

「無理無理。もうずっと触ってないし、弾かないって決めたから」

「今触ってたじゃん」

「そ、それは......」

「本当は弾きたいんだろ?」

「弾きたくない」

「.....どんな事情があるのか知らないけど、頑固だな」

「本当に弾きたくないんだってば!」

「俺のピアノを聴きにここに来たやつがいうことじゃないだろ」

「.....憎いの。ピアノが憎くてたまらないの。この気持ちわからないくせに」

「俺だってピアノを憎んだ時期はあったさ」

「え?」

惺くんが.....ピアノを憎む.....?

「森本紗夜の話。聞いたことないか?」

「なんとなくは.....」

「紗夜に消えてからピアノが嫌になった。ピアノが無ければ俺は紗夜と出会うことはなかったから。別れが辛いなら出会わなければよかったって何度も思った」

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