きらきら星に魅せられて
「ふっ。俺が優しいわけないだろ」

「あんなに優しい音色を出せる人が優しくないわけないでしょ?ピアノにはその人の心が表れるんだよ」

「.....お前はやっぱり紗夜に似てるな」

そろそろ本当にバレてしまうかもしれない。

危機感を覚え、強引に話題を変える。

「.....森本紗夜とはあれから会えてないの?」

我ながらバカげた質問だ。

もちろん、会ってない。

そんなこと自分が1番知っている。


「あぁ、会えていない。.....お前が俺のところにやってきた時に俺が弾いていた曲、知ってるか?」

「きらきら星.....変奏曲」

「そう。あの曲は紗夜の代名詞とも言える曲だった。紗夜自身もあの曲に惹かれてピアノを始めたらしい。だから俺は.....あの曲を弾いたらあいつが来てくれるんじゃないかって.....」

そう言いながら一瞬顔を歪めた惺くんを見て、我慢できなかった。

「野山くん.....ごめんね」

「?」

「ごめんね、ごめんね...」

もう溢れでる涙は止まらない。

ずっと我慢していた。

「どうしたんだ.....?」

「もうわかんないよ.....」


「.....泣きたい時は泣け」

戸惑いながらも泣く私を慰めようと抱きしめてくれた惺くんは、やはり優しすぎるんだと思う。

そして私はその逞しい胸の中で泣き続けるのだった。


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