きらきら星に魅せられて
惺くんが突然ピアノを弾き始めた理由なんて私にはわからない。

でも確かにあのたった数分間の1曲に救われた気がした。

「.....私、がんばる。何をがんばればいいのかわかんないけど、とにかくこの命尽きるまで精一杯生きるよ」

「それでこそ紗夜だ。俺が追い求めた奴だよ。ほらピアノ.....弾くんだろ?」

「.....ピアノ」

いざ弾こうと思ってもピアノの前には座れない。

弾きたくて弾きたくて仕方がないのに、憎しみなんか忘れて前を向かないといけないのに、なぜ私はピアノを拒んでいるんだろう。

その場から動こうとしない私をじっと見つめ、やがてピアノを片付け始めた惺くん。

「.....俺の今日の練習はもういい。ちょっと着いてこい」

「え.....?」

「お前の先生に会いに行こう」

「先生に.....?」

ずっと会いに行っていなかった。

あんな姿の先生を見たくなくて。

あぁ、そうか。

私は過去に縋ってただけじゃなくて、現実も見ようとしてなかったんだね。

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