きらきら星に魅せられて
ピアノが憎いから弾けないんじゃないんだってことはわかっていた。

でもそうやって知らず知らずのうちに自分の心に言い聞かせていたんだと思う。


―――先生がいない現実から目を背けるために。


「私は.....受け入れているつもりで受け入れられていなかった.....?」

.....先生を失ったことを。

「やっと気づいたか。前を向くってことは過去を忘れるんじゃなくて受け入れることだ。俺は今日紗夜に過去を受け入れてもらうためにここに連れてきた」

「過去を忘れるんじゃなくて受け入れる.....」

惺くんの言う通りだと思った。

なら今私がすべきことは.....。

「先生。私は.....あの約束を絶対に果たします。たとえ1人でも。だから.....だから見ていてください」

私は無数の管に繋がれた先生を目に焼き付け、溢れ出る涙を拭うこともしなかった。

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