夏樹と空の恋物語
「こんな私を…好きだと言ってくれて…ありがとうございます…」
ちょっと震える声で、空が言った。
「空さん。約束してくれない? 」
「え? 」
夏樹は空の隣に行き、そっと座った。
「もう、自分のこと「こんな私」って言わないって約束してほしい」
「…でも私…」
「お母さんを信じているんだろう? 」
「はい…」
「それじゃ、もう「犯罪者の娘」なんて思わなくていい。お母さんは無実なんだ、だから、これからは堂々と胸を張って生きればいい。真実は、必ず明るみになるよ。ちゃんと、神様は見ている。やったことは自分に返るんだから」
夏樹はそっと空を抱きしめた。
逞しくてとても安心できる夏樹の腕の中は、空の気持ちをとても軽くしてくれる。
さっきまでモヤッとしていたのに、今はとてもスッとして。
もう「犯罪者の娘」って言われなくていいんだ…。
空の中でずっと重かった気持ちが消えてゆくのを感じた。
「空さん。お腹空かない? 」
聞かれて空は、お腹がグーッと鳴ったのを感じた。
「お腹空いているよね? 僕も、お腹空いて来たよ。なんだか、とっても安心して。こうやって、ずっと、空さんのこと抱きしめたかったから。今、僕の腕の中に空さんがいることが夢なら覚めないでって願っているんだ」
私も夢じゃないって思いたい。
空はそっと夏樹見上げた。
目と目が合うと、夏樹はそっと微笑んでくれた。
その微笑みが嬉しくて、空もつられて小さく笑った。
「何か作ります。…たいした物はありませんが…」
「え? いいの? 作ってもらって」
「はい…。今日は、あのまま待っていたら。佐久間部長と、過ごしていたので…」
「そうだったのか」
「…とりあえず、用意します。待ってて下さい」
空はキッチンに向かい夕食を作り始めた。