夏樹と空の恋物語
冷蔵庫にある材料で簡単に夕食を作り始める空。
ご飯を早炊きで炊いて。
本当にシンプルな焼き魚とジャガイモの煮物とハムとお漬物。
キッチンの食卓に用意された夕食を見て、夏樹はとても喜んでくれた。
「すごいね、魚おいしそうに焼けているよ」
「すみません、あまり食材を買いこんでいなかったので」
「ぜんぜん構わないよ」
「どうぞ、食べて下さい」
「いただきます」
手を合わせて、夏樹は食べ始めた。
「とっても美味しい。魚焼くの上手なんだね、煮物もちょうどいい味だよ」
嬉しそうにご飯を食べてくれる夏樹。
そんな夏樹を見ていると、空はとても嬉しい気持ちが溢れてきた。
誰かとご飯を食べることって、どのくらいぶりだろう?
自分だけに作って食べるばかりで、誰かに作ってあげるなんて考えもしなかった。
夏樹とご飯を食べながら、空は誰かと一緒にご飯を食べる喜びを感じていた。
夕食が終わると、夏樹が食器を洗ってくれた。
そして21時を回る頃、夏樹は帰る事にした。
「今日は有難う。夕飯、とても美味しかったよ」
「いえ…」
「僕の家、実はこの近くなんだ。今は実家から離れて、1人暮らししているから」
「そうですか」
「この部屋からも見えると思うよ。南側に見える、7階建てのマンション。そこの最上階なんだ。たぶん、ここからだと5分くらいかもしれない」
「そんなに近いのですね」
「5分くらいしたら、窓から見てみて。灯りがつくから」
「はい。そうします」
「じゃあ、ちゃんと戸締りしてね。また明日、会社でね」
「はい」
夏樹が帰った後。
空は5分ほどして南側の窓から見えるマンションを見てみた。
空が覗いてみると、最上階がちょうど灯りがついた。
「…無事に帰ったんだ…」
ちょっとほっとした顔をする空。
空にはきれいな星が輝いていた。