夏樹と空の恋物語

 ビルを出て空を追いかけてきた夏樹だが、見失ってしまいどこにも見当たらなかった。

 
 力也のパソコンから何かを抜き取った空。

 
 力也と空。

 不倫している間だった。


 
 何だろう…この胸騒ぎは…。


 夏樹はギューッと締め付けられる胸の痛みを感じた。



 空を見失った夏樹は、そのままその日は帰宅する事にした。


 その後。

 空はしばらく仕事を休んでいた。

 体調が悪いと言って、3日休んでは2日出てきて、また休むことを繰り返していた。

 そのため、夏樹は空に詳しいことを聞く事が出来ないままだった。

 
 


 暑い夏がやって来た。

 梅雨が明けて真夏の暑さが厳しくなってきた今日この頃。


 夏樹と空は社内ではすれ違いの日々を過ごしていた。

 空が夏樹を避けているのもあるが、夏樹も出張や会議などが重なり忙しい日々を過ぎしていた。



 ようやく落ち着いて来たこのごろであるが、空と話をするタイミングがつかめないままだった。



 それから2週間後。

 夏樹は空の家に行ってみる事にした。

 今日は週末で明日は仕事も休みで、時間もゆっくりある夏樹。


 一度家に帰ってから、空の家に向かった夏樹。



 

 玄関のチャイムを鳴らすと、夏樹はちょっと緊張した表情になった。


 
 カチャッと玄関の開く音がした。


 中からちょっとほっそりした空が出て来た。

 黒系の可愛いデザインのワンピース姿の空は、いつもより可愛らしく見えた。


「空さん、大丈夫? 」


 夏樹が心配して尋ねると、空はゆっくり頷いた。


「…どうぞ…」



 

 リビングに通した夏樹に、空は緑茶を入れてくれた。


 とても美味しい緑茶は気持ちを落ち着かせてくれる。


「…見られてしまいましたよね? あの時…」


 空が震える声で夏樹に尋ねた。


「ああ、見たけど。でも、その事を問い詰める気はないよ。何か、理由があったんでしょう? 」


 空はこくりと頷いた。


「話してくれるまで待っているから。1人で、抱え込まないで。僕がいるじゃないか」

 
 
 空の隣に座り、そっと抱きしめる夏樹。


「ちゃんとご飯食べている? 」

「…はい…」

「今日は、僕が何か作ろうと思って買ってきたんだ。一緒に食べよう」


 一緒に…

 そう言われると、空の胸はキュンと鳴った。

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