夏樹と空の恋物語
翌朝。
コトコトと包丁の音が聞こえる…。
なにかいい匂いがする…。
うとうとと目を覚ました空。
いつもの見慣れたベッド。
でも、自分の姿を見ると何も着ていない。
その姿を見て、昨夜、何があったのか思いだした空。
隣りには誰もいない。
でも、手を伸ばすとまだ温もりが感じられる。
キッチンから何か作っている音が聞こえてくる。
「…まだ…寝てていいのかな? 」
そう呟くと、空はまたうとうととし始めた。
「空さん…」
もう一度眠りについた空の耳元で、名前を呼ぶ声が聞こえた。
空はうるうると目を覚ました。
ぼんやりした視界に入って来たのは、はだけたシャツを着ている夏樹の姿だった。
まだ眠そうな目で、空は夏樹を見つめた。
「起きた? 朝ご飯作ったけど、食べない? 」
「…朝ご飯? …そんなの食べた事ないけど…」
「そうなんだ。じゃあ、今日から食べよう一緒に」
「一緒に? 」
「ああ、今まで食べた事がないなら。これから、食べればいい。新しい事を始めればいいんだよ」
新しい事を始めるなんて、考えたことないけど。
この人と一緒にならできそうな気がする。
空はそっと微笑んだ。
「…じゃあ、着替えますから。…待ってて下さい」
「ああ、用意しておくから。来てね」