夏樹と空の恋物語
FAXが流れたことで、力也は忍に呼び出されていた。
事実は知らないと力也は言った。
だが、どこか落ち着きがないような力也。
忍はとりあえず騒ぎが収まるまで、力也には自宅謹慎にしてもらい様子を見ることにした。
FAXの発信源は不明のままである。
騒ぎは収まらないが、いつものように仕事をしている社員達。
自宅謹慎を言い渡された力也は、早退してそのまま自宅へ帰ることになった。
駅前に力也がるいてくると。
黒髪のショートヘヤーにサングラスをかけた女性が、力也の前に現れた。
黒いピッチリしたブラウスに、スリム系の黒いパンツ姿の女性は、力也を見てニヤッと笑った。
「佐久間力也さんね? 」
「そうだが、君は誰だ? 」
「…雅。…」
「はぁ? 」
女性はサングラスを外した。
「え?? 」
女性の素顔を見て、力也は驚き呆然となった。
「驚かなくてもいいじゃない? 昔の恋人じゃないの、冷たくしないで」
力也の首に腕を回して、雅と名乗る女性は、ちょっと色っぽい目を向けた。
「…驚いた? 死んだ筈の人間が、目の前に現れたから? 」
力也は真っ青になっている。
「心配しなくていいのよ。…黙っててあげるから、貴女が私に罪を被せたこと」
「な、何言っているんだ」
「そんなに焦ることはないわ。黙っててあげるって、言っているでしょう? 」
力也に顔を近づけて、雅はニヤッと笑った。
「今夜、あなたの家に行ってもいいかしら? 」
「うちに? 」
「そう、奥さんいないでしょう? 海外に逃亡しているから」
「何故知っている? 」
「知っているわよ、あなたの事はなんでも。…今夜ゆっくり話してあげるわ」
怪しく笑いを浮かべて、雅は去って行った。