夏樹と空の恋物語
「これに、全部記録が残っているわ。勿論、13年前の横領の記録も残っているわよ」
「そんなもので、俺を脅すのか? 」
「脅す? だって、これは真実よ。貴方が横領の罪を隠ぺいするために、雅をさず人者に仕立てあげた証拠も、ちゃんとあるのよ」
バッグから雅はICレコーダーを取り出した。
怪しく笑って再生ボタンを押す雅。
(呼びつけてすまないな、雅)
(どうしたんですか? 大切なはなしとは)
(とりあえず上がって。今日は妻もいないから、大丈夫だ)
(とりあえず、珈琲入れたから、飲んでよ)
(ありがとうございます)
(話なんだが、実は、妻と離婚しようと思っていてね)
(奥様と離婚ですか? )
(ああ、もう弁護士には依頼してあるんだ。だから、離婚が成立したら。俺と、結婚してほしいんだ)
(私がですか? どうしてですか? )
(一目惚れ。ずっと、入社してきた時からずっと想っていたんだ)
(…そ…そう…なんですか? …)
眠そうな雅の声がして、ガシャンと音がした
(…眠ったか…)
カチャッとドアが開く音がした。
(貴方。どう? )
(ばっちり眠ったぜ)
(じゃあこれを…)
(なんだ? もう殺したのか? )
(ええ。…眠っていたから…)
(お前もは九条だな。自分が産んだ子供なのになぁ)
(貴方の子供じゃないから…)
(そうだったな。貸せ)
(これでいい。子供を殺したのは、雅だ。あとは俺に任せておけ)
(本当にこれでいいの? )
(心配ない。お前は出国準備しろ。後は海外で過ごして、完全にほとぼりが冷めるまでは逃げ切ればいいんだ)
(…うん…)
ICレコーダーを停止させ、雅はニヤッと笑た。
「どう? これでも、逃げ切れると思う? 」
力也は何も言い返すことができず、まるで苦虫でもかんだような顔をしている。
「…自分のやったことは、自分に返って来るの」
くっと、雅を見た力也は、勢いよく雅の首をつかんだ。